東北大学は、蚊が餌を飲み込む際に、2つのポンプを巧みに使い分けていることを発見した。この研究成果は将来的に、感染症が広がるメカニズムの解明やマイクロスケールの流体駆動デバイス設計に役立つことが期待される。
東北大学は2018年3月22日、蚊が餌を飲み込む際に、2つのポンプを巧みに使い分けていることを発見したと発表した。同大学大学院工学研究科 准教授の菊地謙次氏をはじめ、バージニア工科大学、ブルックヘブン国立研究所、東洋大学の共同研究グループによる研究成果となる。
今回研究グループは、シンクロトロン放射光を利用してX線位相コントラスト顕微鏡を構築し、蚊の頭部を透視した。それにより、頭部にある大小2つのポンプを使って餌を吸い込むポンプ運動の様子を可視化することに成功した。
実験と理論解析の結果、蚊は2つのポンプを巧みに使って、2種類の飲み方をしていることが分かった。1つは、吸血のように連続的に飲み込む時の連続モード(ゴクゴク)で、もう1種類は、針内が詰まっている時や粘り気の強い花蜜を力強く飲み込む時のバーストモード(ゴックン)だ。
普段はポンプを交互に動かしているが、吸引力を上げたい時には同時にポンプを動かすなど、ポンプのモードを使い分けて粘り気のある餌を効率的に飲み込んでいる。このような仕組みによって、蚊は過酷な生態環境を生き延びてきたと考えられる。
これらの成果により、粘りの強い餌を捕食する生物が、連結した微小のポンプによって巧みに吸引する方法が明らかになった。将来的には、感染症が広がるメカニズムの解明やマイクロスケールの流体駆動デバイス設計に役立つことが期待される。
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