ANSYSはモデルベース開発システム「SCADE R19」を発表。検証の自動化を支援する、閉ループテストのシナリオ記憶機能や、AUTOSARのルールチェッカーなど追加した。モデルベース開発ツールSimulinkとStateflowのデータをインポートすることも可能だ。
CAEベンダー ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンは2018年1月30日、同社のモデルベース開発システム「SCADE R19」を発表した。「SCADE」はANSYSが2012年に買収したEsterel Technologiesが開発したシステム。ANSYSがこれまで強みとしてきたCAEツール群と連携することで、部品レベルの設計およびシミュレーションからシステムレベルの設計までを支援する。
SCADE R19は、以下の4つが注目テーマだという。
「ワークフローの統合化、パフォーマンスとユーザビリティ」をテーマとする機能としては、閉ループテストのシナリオ記憶機能を挙げた。テスト環境ツール「SCADE Test」のサービスAPIを強化した。閉ループテストにおけるシーケンスを記録しておくことで、検証作業を自動化し、工数の大幅削減や作業効率の向上が望めるとしている。
「SCADE Display」のHMI設計機能ではグラデーション設定やSVG(Scalable Vector Graphics)パスを標準サポートし、より美しく凝った画面が作成可能となった。
アンシス・ジャパン システムソリューション部 システムエンジニアリング製品担当でシニアアカウントマネージャーの石井通義氏は、「美しいグラデーションやSVGに対応するツール自体は世の中に多く存在する。SCADE Displayは各種の機能安全規格の認証に対応していることが特長である」といい、認証規格としては以下に対応している。
さらにスタンドアロンで実行可能なHMI用として、Windowsのマルチタッチ機能を標準サポートした。
「自動車システムとソフトウェア用の専用ソリューション」としては、車載ソフトウェア標準規格 AUTOSARのルールチェッカーを追加。アーキテクチャ設計支援ツール「SCADE Architect」の機能で、システム設計上の問題や矛盾を自動検出するルールチェッカーにAUTOSARの表現が加わった。機能モデルやアーキテクチャモデルに対し、AUTOSAR規格の76個のルールと、モデルの首尾一貫性を矯正する80個のルール(全ての束縛は不可とする)を適用できる。
SCADE ArchitectはAUTOSAR Release 4.2.2のアーキテクチャファイル(ARXML)のインポートおよびエクスポートに対応する。制御設計ソフト「SCADE SUITE」と、AUTOSAR RTE準拠のコードを生成する「AUTOSAR RTEラッパー」や、さまざまなAUTOSARプラットフォームと連携することで、ルール順守を非属人的にチェックする仕組みが構築できる。
新機能「Simulink/Stateflow Importer」が加わり、「MATLAB/Simulink 2011b〜2016b」をサポート。SCADE側にMathWorksのモデルベース開発ツールであるMATLAB/SimulinkとMATLAB/Stateflowのモデル資産の取り込むのを支援する。インクリメンタル転換用に中間モデルが表示でき、パラメータ化をサポートした新しいコンフィギュレーションフォーマットも提供する。
アビオニクス向けとしては「SCADE Avionics Package」を提供し、AADL(The SAE Architecture Analysis & Design Language) V2.2に対し完全互換対応する。AADLはリアルタイム組み込みシステムのための国際規格。AADLのレガシーモデルのインポートと、外部ツールでの解析で利用するためのエクスポートに対応する。
「2016年のパリモーターショーでトヨタ自動車 社長の豊田章男氏が、自動車の機能安全を保障するためには約142億km走行して検証しなければならないと話していたが、この距離は地球から冥王星に行って、地球に戻ってきて、さらに天王星、海王星へ行くくらいの距離であり、それを実機でやるのは不可能」(石井氏)。そこで、SCADEのようなシステム全体を巻き込んだシミュレーションがその役割を担えるとしている。
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