IoTで予防歯科の啓蒙と促進を「入れ歯は確実に防げる」医療機器ニュース(2/3 ページ)

» 2017年12月26日 14時00分 公開
[小林由美MONOist]

60歳代以降でも間に合う――予防歯科の啓蒙と促進へ

日吉歯科における歯科医院向けクラウドサービスの活用例(出典:日吉歯科診療所)

 山形県酒田市の日吉歯科診療所(日吉歯科) 理事長である熊谷崇氏は、生涯で全ての歯を残すことを目指す「KEEP 28」の重要性や生涯に影響する効果について述べた。2016年10月に日吉歯科が初めて、富士通の歯科医院向けクラウドサービスを導入した。

日吉歯科診療所(日吉歯科) 理事長 熊谷崇氏

 日吉歯科は1980年4月に開業。過去には約3万5000人を治療し、定期的かつ継続的なメンテナンスを主体とする歯科診療に従事してきた。2016年には長男の熊谷直大氏が東京・汐留に分院を開業し、父の崇氏が長年培ってきた予防歯科への知見を受け継ぎ診療している。

 熊谷氏は、本来あるべき歯科医療の条件として、以下を挙げる。

  • 教育された歯科衛生士が専用チェア(個室)で口腔ケアを任される
  • 住民は担当衛生士によるメンテナンスを目的として定期的に通院する

 日吉歯科においても上記の考えに基づき、30年以上にわたり予防歯科メンテナンスを行ってきたと共に、熊谷氏は予防歯科に携わる医師や歯科衛生士の教育にも取り組んできた。

 

 KEEP 28は、親知らず以外の永久歯28本を1本も抜歯することなく生涯を過ごすことを目指す。熊谷氏は「歯も臓器の一部である」と説明する。つまり歯を失うことは臓器を失うことに等しいことであって、「全身の健康状態にも影響する」(熊谷氏)という。歯の喪失が急増するタイミングと、要介護状態が急増するタイミングがともに70代以降と一致していることからも、歯の喪失と健康寿命には相関性があると考えられると熊谷氏は指摘する。

アメリカ老年学会2008年次大会における、東京大学による発表より(出典:日吉歯科診療所)

 熊谷氏は、予防歯科における世界的権威と言われるスウェーデンの歯科医師 ペール・アクセルソン氏が2004年にまとめた論文のデータを紹介した。アクセルソン氏によるメンテナンスを30年にわたり受けてきた患者はほとんど歯を失わなかったといい、特に20〜35歳と比較的早期に予防歯科に取り組み始めたグループは喪失歯数が平均で0.4本と非常に少なかったという。日吉歯科においても同様な調査を実施し、2008年12月時点のデータにおいて、上記のアクセルソン氏の調査と同等の結果が出たと説明した(以下の図)。

メンテナンス患者の平均喪失歯数(出典:日吉歯科診療所)

 「入れ歯にならない方法は既に分かり切っている」(熊谷氏)。日吉歯科の調査では、予防歯科はなるべく早期のうちに取り組むことに越したことはないが、初診が60歳代以降であっても歯の喪失を防ぐことが可能であるという結果も出ている。また初診時に既に1〜2本程度失った状態であっても、適切なメンテナンスを継続することで歯の喪失を防げているということだ。

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