3Dプリンタによる作品や利用アイデアを募る「ファブ3Dコンテスト 2017」の結果発表が行われた。今回用意されたテーマは「笑い」や「未来の楽器」など。小学生からプロまで幅広い応募の中から優勝に輝いたのは?
「ファブ3Dコンテスト2017」の2次審査および表彰式が、2017年11月23日に東京ミッドタウン)において開催された。ファブ3Dコンテストは、新たな3Dプリンタの利用方法を開拓するとともに、それを担う人材を発掘しようというイベント。慶應義塾大学ファブ地球社会コンソーシアムが主催する。2016年にスタートし、2017年で2回目となる(関連記事:3Dプリンタブームは去っていない! 「ファブ3Dコンテスト 2017」開催)。
募集カテゴリーは全部で5つ。小学生を対象とした「夏休みの自由研究」、家族を対象とした「暮らしの自由研究」、中高生を対象とした「FAB甲子園」、そしてクリエイター向けの「エンターテインメント部門」、モノづくりのプロおよびセミプロ向けの「デザインエンジニアリング部門」が用意されている。
作品の募集期間は2017年8月1日〜10月10日だった。夏休みの自由研究以外のエントリーは、慶應義塾大学が運用する制作過程の共有サイト「Fabble」を通して行われた。それぞれのカテゴリーの優秀賞および特別賞は当日までに選ばれており、当日はそれらの表彰とともに、最優秀賞の審査および発表が行われた。
同大学 環境情報学部 教授でファブ地球社会コンソーシアム代表、ファブ3Dコンテスト実行委員会 委員長の田中浩也氏は冒頭のあいさつで「8歳から71歳まで、82作品を応募いただいた。また全国のファブ施設にも協力いただいている。コンテストを通じて3Dプリンタの産業と文化を育てていきたい」とあいさつした。
小学生を対象とした「夏休みの自由研究」カテゴリーは、「力の入ったすばらしい作品ばかりで審査は難航した」(カテゴリー審査委員長の政策・メディア研究科 名誉教授 小檜山賢二氏)とのこと。同カテゴリーは3Dプリンタによる造形物よりも、テーマを選んだ理由や研究過程の評価の割合を高くしている。これは「小学生に研究開発の基本を身に付けてほしい」からだという。
今年の同カテゴリーには、「観察と制作」というテーマが設けられていた。応募作品には、3Dプリンタで作成したオリジナルツールを用いた研究や、既存モデルをベースにした生き物のデザインやアニメーションの作成、また日本古来の文様を調査して、それを立体化するなどユニークなものが見られた。
その中で堂々たる優秀賞に輝いたのは、小学5年生の平野喬久くんによる「スイカの維管束 Part2 スイカを育ててモデリング」。平野くんは実は昨年のファブ3Dコンテストの自由研究カテゴリーでも、維管束のテーマで優秀賞を獲得している。本人によると、「もっと満足するものを作りたかった」とのこと。「もう一度ここに来ると心に誓っていたので、実際に来ることができてうれしい」(平野くん)と話していた。
今年はスイカを育てることからスタート。維管束に色を付けようとして失敗するなどさまざまな試行錯誤を重ねていった過程が圧巻だった。種やヘタまで造形して作品を完成させ、2回目も文句なしの受賞となった。
地形のデータを造形して、現地で確認しながらフィールドワークを行ったのが、小学5年生の菅野晄さんによる「国分寺の地形を探る〜国分寺崖線を3Dプリント〜」だ。これは国土地理院のデータを基に、地元にある国分寺崖線と呼ばれるユニークな地形を造形した。「研究するためのツールを自分で作り、フィールドワークを行った。自分のいる場所を直感的に把握でき、応用の可能性がある試みだ」(小檜山氏)。
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