IoTの活用が広がりを見せていますが、上手に活用すれば製品品質の向上につなげることも可能です。本連載では、最新の事例を紹介しながら、IoTを使って製品の品質をどう向上させるかについて説明していきます。第1回となる今回は、IoTを取り巻く動きの概要について紹介します。
昨今、IoT(モノのインターネット)という言葉が頻繁にメディアに登場するようになっています。インターネット上で「モノ」と「コト」をつなぎ、何か新しい製品やビジネスモデルを作ったり、業務を改善したりするのに活用されています。IoTは、検証・実験の段階は既に終わり、実際に現場で入手した不良品などのデータを各関連工程にフィードバックして製品の品質を向上したり、手直し工数を削減して利益貢献したりといったビジネス成果を得る実用の段階に入ってきました。
携帯電話を使った自動車の配車サービスのようなビジネスモデルの場合は、設備面で大掛かりな投資などが必要なく、比較的小さい設備でビジネスの仕組みを構築することができます。しかし、自動車や航空機の開発・製造工程で、品質向上にIoTを使おうとする場合、かなり広い範囲で複雑なビッグデータを集めて原因を分析、構造化されたプロセスによる対策を、組織的に全員参加で実施しないと、品質を向上させたりすることは難しいです。このような場合は、IoTだけでなく、「IoP(プロセス)」と「IoH(人)」の考慮も同時に必要になってきます。
IoPでは「プロセスをつなぐ」ということを考えます。インターネット環境で仕事を進める場合、グローバルで各プロセスをリアルタイムで接続して協業するなど、共通の仕事の進め方やルールといったことが非常に重要になってきます。そうしないと、各組織の多くの人や設備などがバラバラで動くことになってしまう。こういったIoPの仕組みがない場合、インターネット環境では不具合や不良の発生が加速していきます。
さらに、IoHは「ヒトをつなぐ」ということであり、非常に重要になります。定量化された精度の高い現状値と目標が特に重要で、グローバルな組織で、人が自立して自走するということを実現する必要があります。実際に、米国の大手IT企業では、現状をIoTによる細かいサイクルタイムでデータを集め、それを元にすることで精度の高い目標が設定でき、さらに最適なタイミングで目標をアップデートしていました。働き方改革へのアプローチも、IoHの領域に入ってきます。グローバル企業の場合、それぞれ違った文化圏で仕事をするからこそ、IoHのテーマを入れ込んでいく必要があります。
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