シャシーダイナモでどこまで公道走行を再現できるか、東陽テクニカの挑戦設計開発ツール(1/2 ページ)

東陽テクニカのプライベート展「東陽ソリューションフェア 2017」(2017年9月7〜8日、ベルサール東京日本橋)において、東陽テクニカ 技術研究所 所長の木内健雄氏が基調講演を行った。輸入販売事業を主とする同社がなぜ技術研究所を立ち上げたのか。

» 2017年09月13日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
東陽テクニカの木内健雄氏

 シャシーダイナモ上で、クルマのコーナリング性能や自動走行をテストできないか――。

 東陽テクニカのプライベート展「東陽ソリューションフェア 2017」(2017年9月7〜8日、ベルサール東京日本橋)において、東陽テクニカ 技術研究所 所長の木内健雄氏が基調講演を行った。輸入販売事業を主とする同社がなぜ技術研究所を立ち上げたのか。また、自動車メーカーに長年勤めた木内氏は自動車の計測技術の課題をどのように見ているのか。

輸入販売の東陽テクニカがなぜ研究所?

 技術研究所を設立したのは2017年1月だ。2017年7月には、自動車のテスト装置を導入して製品のデモンストレーションなどを行うテクニカルリサーチラボも神奈川県厚木市に構えている。技術研究所 所長には、2016年11月まで本田技術研究所の上席研究員だった木内氏を招聘(しょうへい)した。

 木内氏は、エンジンやハイブリッドシステム、燃料電池のシステム制御技術の開発に携わった。1983〜1992年のホンダF1第2期にはアイルトン・セナやアラン・プロストの専属エンジニアを務めた経験も持つ。長年、テスト装置を使う側にいたということになる。

 なぜ商社が研究開発を行うのか。自動車メーカーの開発の現場を知る木内氏は「海外のテスト装置は、モノが素晴らしいのは分かるが不具合が多い。メンテナンスに時間がかかり、移動できない大型の装置など、そもそもサポートが難しい場合もある。これに対し、東陽テクニカは国内で校正やメンテナンス、カスタマイズを提供できる体制づくりに注力してきた。しかし、商社として今までと同じことだけをやっていていいのかという思いがある。取り扱い製品に自分たちで付加価値を持たせて、システムとして提供できるような研究開発に取り組んでいくための技術研究所だ」と説明した。

ホンダ時代から考え続けていたこと

 木内氏が本田技研工業に入社した1981年は、キャブレターが電子制御燃料噴射装置に切り替わるような、エンジンが進化する過渡期だったという。

 「こうした単機能の進化を、複数の部署がそれぞれ進めていくような開発だった。現在は単機能での進化に限界がある。例えば環境面では電気の世界にシフトしていくが、全て電気になるクルマもあれば、エンジンとモーターを併用するクルマもある。さらには、左右別のモーターを制御する必要も出てきた。自動運転も、人の運転と車両による安全なアシストを共存させるのでシステムが複雑になる」(木内氏)

 複合的なシステムの制御開発では、シミュレーションは効率的に行えるようになったが、出来上がった実車の機能をどう評価するのかが課題になると指摘する。「単機能だけに対応した従来のテスト環境では足りない。1つ1つの機能は正しく動いていても、連携したり機能を受け渡す時に問題が起きる。テストコースや公道での評価が中心となるが、不具合による事故や周囲への影響などリスクがある。しかし、室内で複雑な走行を再現できる設備がない。これをどうにかできないかという思いが常に頭の片隅にあった」(木内氏)。

単体テストとテストコースの間を埋めるソリューションを提案することを目指す(クリックして拡大) 出典:東陽テクニカ

 そこで、要素試作や単体テストと、テストコースでの実走行の間を埋める、新しいシャシーテスト「DMTS(Driving & Motion Test System)」を技術研究所で開発し、東陽テクニカとして提案していく。車両の運動性能や自動運転の実車試験をシャシー上で実施できるシステムを提供することにより、車両の開発期間の短縮に貢献する。路上だけでなく室内でも十分な検証を行うことが完成度の向上にもつながる。

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