F50の用途として想定しているのが「プラント設備診断」「中古住宅の性能評価」「IoT(モノのインターネット)向け電子部品の熱設計」だ。木村氏は「世界全体で見ると、サーモグラフィカメラの2大アプリケーションは、プラント設備診断と中古住宅の性能評価になる」と説明する。
国内のプラント設備は、定期的に休止して点検することが法律で定められている。一方、海外では設備を休止せずに常に稼働中の状態を把握し、必要な時にメンテナンスを行うCBM(状態監視保全)が一般的だ。このCBMに広く用いられているのが、普及価格帯のサーモグラフィカメラである。「グリップ型と比べて、楽な姿勢かつ広いアングルをカバーできるF50は有力な選択肢になる」(木村氏)という。
また欧米では、中古住宅の値付けの基礎データとなる断熱性能を計測するためにサーモグラフィカメラが用いられている。木村氏は「海外は中古住宅の回転率が60〜80%と高いが、国内は10%程度と低い。その一因になっているのが、中古住宅の性能評価がはっきりしていないことだ。日本政府も中古住宅の回転率の低さを課題と捉えており、今後はその性能評価にサーモグラフィカメラが用いられる余地は大きい。当社も市場開拓に向けて積極的に提案していきたい」と強調する。
海外と異なり国内におけるサーモグラフィカメラの最大のアプリケーションは研究開発になる。特に、電機(弱電)、機械、精密分野の温度試験で広く利用されている。
これらの温度試験は、熱電対を貼り付けて行う手法もあるが、小さなものには貼り付けにくいという課題がある。「市場が拡大するIoTは小型であることが求められる。そんなIoTに用いる電子部品やモジュールももちろん小型化が必要であり、熱電対を貼り付けて温度試験を行うのはより困難になる。F50は、オンラインモデルであれば動画撮影も可能なので、温度試験の手間を省くとともに、より詳細な温度分布の測定も可能になる」(木村氏)という。
同社社長の秋津氏が述べた「ソリューションビジネスへの転換」という意味では、F50はまだ「箱売り」の製品にとどまっている。ただし今後は「顧客の意見を踏まえて、本体コントローラーをよりアプリケーションに特化させていくという方向性もある。サーモグラフィカメラにとどまらない価値提供も視野に入れていきたい」(木村氏)など、スマートフォン型になっている本体コントローラーを活用した製品展開の可能性を示唆した。
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