WSC2017では、チャレンジャークラスも規則変更があった。従来の規則では、車体サイズは4.5×1.8m、太陽電池パネルの面積は6.0m2だった。WSC2017では、車体サイズが5.0×2.2mと大型化する一方で、太陽電池パネルの面積は4.0m2と小さくなった。ただし「速さを競う」という点に変更はない。
WSC2015に引き続き、工学院大学チームを多数の企業がサポートしている。車体を構成する炭素繊維強化樹脂の素材や製造プロセスは帝人グループが提供。GHクラフトにおける車体製造は、学生たちが2カ月間泊まり込んで行ったという。
ソーラーカーレース専用の低燃費タイヤと太陽電池パネル用フィルムはWSCの冠スポンサーを務めるブリヂストンが、太陽電池パネルはサンパワー(SUNPOWER)が、丸みを帯びたウインドスクリーンは植木プラスチックが、設計に用いた3D CADツールはSOLIDWORKSが、サポートカー車内の騒音を抑えるノイズキャンセリングシステムとなる補聴器はシバントスが提供している。
これらの中でも興味をひいたのが日立金属のアモルファス合金コアを用いるスペシャルモーターだ。モーターシステムの開発はミツバが担当した。このスペシャルモーターは、ソーラーカーでは珍しい、速度を一定に保つことができるオートクルーズ機能を搭載している。速度制限ぎりぎりでアクセルとブレーキを制御し続ける必要のあるドライバーにとって、オートクルーズ機能は負荷や疲労を減らすことができて有益だ。
さらに、他の車両を追い越しやすくするため、ステーターを軸方向にスライドさせて有効磁束を小さくし、モーターの回転速度を高められる可変界磁機構を搭載した。「一般的なエンジン車における無段変速機(CVT)をイメージすると分かりやすい」(ミツバの説明員)。
ステーターの突出量が0mmのトルクモードの場合、モーターの回転速度は751rpm、最大効率は94.0%。ステーターの突出量が20mmのスピードモードでは、モーターの回転速度は1079rpmに上がり、最大効率は89.5%に下がる。エネルギー効率は犠牲になるものの、他の車両を追い抜くための仕掛けを用意したということだ。
ただし、機能を追加するということは、高温や振動など厳しい環境に置かれるソーラーカーレースにおいて故障の原因にも成り得る。実際のレースでどのような効果を発揮するのか注目だ。
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