3D CAD用のVRシステムは「事前変換方式」と「変換不要方式」どちらが良いのか?産業用VRカレイドスコープ(2)(1/2 ページ)

本連載では産業全体のVRの動向や将来展望について深堀りして解説していきます。今回は、3D CAD用のVRシステムにおける、「事前変換方式」と「変換不要方式」について説明します。併せて、前回記事公開後の、産業VR関連の動向についても紹介します。

» 2017年04月05日 10時00分 公開

 製造業VRエバンジェリスト、プロノハーツの早稲田です。前回はこれまでの産業VRの歴史や今後予想される動きについて説明しました。今回は、3D CAD用のVRシステムにおける、「事前変換方式」と「変換不要方式」について説明します。併せて、前回の記事を公開した後の、産業VR関連のニュースについても紹介します。

「事前変換方式」と「変換不要方式」について

 「事前変換方式」のシステムは、STEPやParasolidなどの3D CAD用ファイルをVRビュワー用の方式にあらかじめ変換しておくものです。CADファイルをその場で指定して一定時間かけて読みこむ方式もこのカテゴリに含まれます。国内のシステムでは「MREAL」や「prono DR」がこれに該当します。

事前変換方式のプラグインツール(「Unity CAD Importer」):「CADで設計した3Dモデルを「Unity」向けに変換するプラグイン登場」より)

 「変換不要方式」というのは、3D CADにいま表示されている3DモデルがそのままVRとして表示されるものです。ほぼ全部のシステムが「OpenGLインジェクション」、または「OpenGLリプレース」と呼ばれる方式です。昔からCADの表示に使われている3D描画システムであるOpenGLがデファクトスタンダードであることを利用して、OpenGLのライブラリファイルのふりをして、CADからの3D描画を受け取って横取りし、さらに裏で本来のOpenGLに3D表示データを丸投げしつつVR表示も行うというものです。これは「IPT」といわれていたVRシステムの時代に広く使われていた方法です。IPTについては前回をご覧ください。海外システムでは、有名な「TechViz XL」など昔から多数ありますが、国内システムでは「EasyVR」が該当します。

 まず変換不要方式の大きなメリットは、以下のようなことが挙げられます。

  • データの事前変換が必要ないので即時に表示できる
  • CAD上でアニメーションするデータもVRとして表示できる
  • 汎用的なCADファイルをエクスポート出来ないマイナーな3D CADシステムでもVR表示ができる

 逆にそのデメリットは、以下のようなものです。

  • CAD上でビュー切り替え、視点回転が重いほどの巨大なデータはVR上でも表示が重い
  • CADの表示も同時に動作するため、同一規模のデータを表示する場合に事前変換方式のシステムより少なくとも1.5倍程度は毎秒フレーム数が低下する。それを補うため、CPU、グラフィック双方により高いスペックが要求される
  • データを表示するために必ずそのCADソフトのライセンスが同時に必要で、ハイエンドCADではVR表示システムよりCADのライセンス価格の方が高い
  • CADのOpenGL表示は同時にモデル全体を描画しているわけではなく、いまCADのウィンドウに表示されている部分しかVR化できず、視点移動のためにCADとVRビュワーの両方を操作しなければならない

 次に事前変換方式の場合、事前にポリゴンリダクションなどの最適化を行っておくことが可能なため、CAD本体でもデータが巨大すぎてスムーズに視点回転できないような大規模なモデルでもスムーズに閲覧することができるシステムもあります。大規模なプラント全体を実用的な性能で表示できるのは、現在のところ事前変換方式に限られます。

 また、変換後のデータを見るビュワーソフトウェアの動作においてはCAD本体は不要です。よって、ユーザーの利用費用を比較的安価に抑えることができ、変換システムとビュワーの1対多数の大規模システム導入に向きます。

 一方で事前変換方式の現在最大のデメリットは、「CADモデルのアニメーション表示に対応できないこと」です。このような用途の場合、CADデータをUnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンで利用できる形に変換し、ゲームエンジン上でアニメーションを作成するという方法で代替することになります。

 しかし日本の製造業界だと、自社内でゲームエンジンを用いた3Dアニメーション作成ができるのは、CG素材作成、プログラミングのできる多彩な人員を抱えられる大手企業のごく一部に限られ、中小製造業だと利用例がほとんどありません。

 よって、変換不要方式が最大のメリットを発揮するのは、「CAE結果のアニメーション表示のVR化」だと考えられます。CAEはもともと、CADよりもモデルを単純にしておく必要があるため、3Dモデルの規模が大きすぎることによる表示速度低下の影響を受けにくいためです。CAEの場合、CFD形式という解析結果のアニメーションの汎用ファイル形式も存在しますので、今後、事前変換方式、変換不要方式の両方でVRアニメーションでの解析結果表示の利用が進んでくるでしょう。

 また、変換不要方式でのリアルタイムポリゴンリダクションができないのは、あくまでも現時点の話です。「Oculus Rift」でPC用VRヘッドマウントディスプレイが再度脚光を浴びてから、わずか3年で、従来はとても実現しないだろうと思われていたVR向けの3D表示技術が次々と開発されました。

 OpenGLリプレースで取得したポリゴンをリアルタイムで軽量化して表示するという“離れワザ”も、既に研究が開始されているかもしれません。特に、1990年代の産業用VRのブームが去った以降も長年、細く長く開発が続けられていたフランス国内の動向に注目したいところです。

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