経営危機の東芝は、「不適切なプレッシャーの影響範囲」の再審査が必要との判断から2016年度第3四半期の決算発表を再延期することを発表した。同時に東京証券取引所と名古屋証券取引所から監理銘柄(審査中)に指定され、上場廃止の可能性を示されている。
東芝は2017年3月14日、2017年3月期(2016年度)第3四半期の業績見通し発表の再延期を発表。同年4月11日に延期することを決めた。
海外原子力発電(原発)関連事業の買収問題で経営危機に陥っている東芝は当初は2017年2月14日に2016年度第3四半期決算を発表予定だった。それが、同社の原発関連のグループ会社であるウェスチングハウス(WEC)において、内部統制の不備を示唆する内部通報があり、その調査のために2017年3月14日に延期を発表。さらに今回は、その適用範囲が広がる可能性が生まれたことから調査の範囲を広げる必要があり、再延長を申し入れ承認を受けたという。
そもそもの原因となったのがWECの米国CB&I ストーン&ウェブスター(S&W)の買収に伴う取得価格配分手続の過程における内部統制の不備である。ここに経営陣からの「不適切なプレッシャー」があったとされている。今回明らかとなった内部通報の内容は「WECの管理職から原子力発電所のコストの数値に関してWECが有利となるように数値を操作することを強要され、拒否したら職責をとかれた」というもの。
2017年2月以降の調査の結果「不適切なプレッシャー」については確かにあったものの、該当期間に解雇されたような人物は見当たらず「現段階で四半期財務諸表の変更が必要な重要事項は見つかっていない」と東芝 社外取締役で監査委員会委員長の佐藤良二氏は述べている。ただ、影響の時期が四半期内にとどまらない可能性があるためあらためて期間を広げて「不適切なプレッシャー」についての影響範囲を精査する。そのため決算発表の再延期という流れとなった※)。
※)関連記事:東芝が決算発表を延期、原因は「不適切なプレッシャーの存在」
東芝 代表執行役社長の綱川智氏は「『ある』という証明はできるが『ない』証明をすることは非常に難しい。今回、不適切なプレッシャーが『ある』ことは示せても、(財務諸表への影響が)『ない』という証明は難しく、時間がかかってしまっている。申し訳ない」と述べている。
これらの影響もあり、東芝は2017年3月15日付で東京証券取引所および名古屋証券取引所から監理銘柄(審査中)に指定される。監理銘柄とは、証券取引所が取り扱い証券において上場廃止の可能性を投資家に周知する意味で設置しているもので、上場廃止基準に該当するかどうかの審査を行い、該当すると判断された場合は、上場廃止となり整理銘柄として移行する。
現段階でも既に2016年度末の段階で債務超過となることが確実視されており、日本取引所グループの規則によると二部への降格が実施される見込みだ。綱川氏は「二部降格は仕方ないと受け止めている。厳しいことは理解しているが克服していきたい」と述べている。
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