力技でも欲しかった、キヤノンが医療分野に掛ける夢製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

キヤノンは、2016年3月に発表した東芝メディカルシステムズの株式取得について、競争法規制当局のクリアランス認証が完了したため、東芝メディカルシステムズの子会社化を行う。

» 2016年12月20日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 キヤノンは2016年12月19日、東芝メディカルシステムズ(以下、東芝メディカル)の株式取得について、競争法規制当局のクリアランス取得が完了したため、子会社化を行うことを正式に決定した。

photo キヤノン代表取締役会長 CEOの御手洗冨士夫氏(左)と東芝メディカル代表取締役社長の瀧口登志夫氏(右)

限りなくグレーに近い白

 キヤノンは2016年3月17日に東芝と東芝メディカルの株式譲渡について契約を締結。しかし、東芝が債務超過に陥る直前の状況で早急に現金が必要な状況であったことから、MSホールディングスという間接企業を設立し、M&Aにおいて時間が必要な各国政府の独占禁止法への対応への時間を稼ぐという手法に出た。

 この譲渡プロセスが公正取引委員会にとっても違法かどうか際どいと認識され、同委員会は「これら一連の行為が、キヤノンが当委員会への届出を行う前になされたことは事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあることから、今後、このような行為を行わないよう、キヤノンに対して注意を行うとともに、上記スキームの実行に関与していた東芝に対して、今後、事前届出制度の趣旨を逸脱するような行為に関与することのないよう申し入れを行った」とする声明を出す事態に陥った。

 ただ、キヤノン代表取締役会長 CEOの御手洗冨士夫氏は「2016年3月に入った段階で東芝から最後の条件として多くのキャッシュが必要だという話があった。私は経理出身であるので状況が深刻なものだと分かった。そこで、同年3月31日の決算までに売却益を正規に売上高や利益に反映できるということと、各国の独禁法に違反しない、ということを2つの条件に法務チームなどに対応を検討させ、問題なく両立できるという方法を見つけた。公認会計士にも何度も確かめて結論を出した方法なので、私自身はグレーだとは思っていない」と考えを述べている。

人口増加に寄り添う次の成長の芽

 際どいラインを渡ってまで、キヤノンが東芝メディカルを買収する理由にはどういうことがあるのだろうか。御手洗氏は「次の成長の軸1つが医療だからだ」と述べる。

photo 「私自身はグレーとは思っていない」と強調する御手洗氏

 キヤノンは従来カメラや事務機など光学技術を基軸とした製品群で高いシェアを持ち、成長を続けてきた。御手洗氏は「キヤノンは1937年の創業以来、工業会の動きに合せて時代のニーズを見ながら先進の技術で新しい製品を作り成長を続けてきた。しかし、グローバル化の流れの中、地域間、企業間の競争が激化し、技術の進化が加速。これらにより製品ライフサイクルの短命化が進んだ。スマートフォンやクラウド、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などの動きがまさにそれを象徴している。その中で従来の光学技術を中心とした事業は成熟化が進み、これまでのような飛躍的な成長は難しくなった。次の成長の軸を生み出すことが必要となった」と語る。

 これらの課題の手掛かりとして御手洗氏が目をつけたのが「人口増加に寄り添う」ということである。「当然のことだが潜在的な経済成長の1つの源泉は人口増加である。世界を見ると人口が爆発的に増加している。人口増加による市場拡大というダイナミズムを取り込みながら成長できるのはどういう領域かというのをずっと考えてきた」と御手洗氏は述べる。

 そしてたどり着いた答えが「安心・安全」分野である。御手洗氏は「人が生活する限り、安心と安全は必ず求めるものである。この領域でキヤノンとして親和性が高い領域を考えた」と語っている。

 そこで、新たに成長の軸として取り組む領域を2つ選定した。そのうちの1つが「ネットワークカメラ」である。監視カメラを含むネットワークカメラ領域では、2015年に世界最大手となるアクシスコミュニケーションズを買収した他、2014年にはビデオ管理ソフトのマイルストーンシステムズを買収。「期待通りの成果を残しつつある」と御手洗氏は手応えについて語っている。

 そして、2つ目の成長領域として考えたのが「医療・ヘルスケア分野」である。

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