片手で持ち運べる小型遺伝子検査機を開発医療機器ニュース

産業技術総合研究所は、日本板硝子、ゴーフォトンと共同で「モバイル遺伝子検査機」を開発した。片手で持ち運べるほど小型軽量で、約1時間を要していた細菌やウイルスの検出が約10分で可能に。バッテリー駆動するので検査場所も問わない。

» 2017年02月22日 15時00分 公開
[MONOist]

 産業技術総合研究所(産総研)は2017年2月8日、日本板硝子およびゴーフォトンと共同で「モバイル遺伝子検査機」(小型・軽量リアルタイムPCR装置)を開発したと発表した。マイクロ流路で目的の細菌やウイルスの遺伝子を高速に増やす産総研の技術と、日本板硝子独自の小型蛍光検出技術を組み合わせた。

 今回両者では、さらにマイクロ流路内の試料を精度よく安定して移動させる方法を開発することで、小型軽量/高速のモバイル遺伝子検査機の試作機を完成させた。約200×100×50mm、重量約500gと片手で持ち運べるほど小型軽量ながら、従来は約1時間かかっていた検査を、約10分でできるようになった(前処理などは含まない)。

 検査精度は、産総研が試薬を作製し同試作機でPCR増幅テストを実施したところ、大腸菌、ノロウイルス、インフルエンザを約10〜12分で検出できた。これは、大型で高価格な従来のPCR装置とほぼ同等(20copies/μL以下)であることが分かった。

 小型化により、価格も大幅に低減できた。また、バッテリー駆動で、ある程度の振動にも耐えられるため、移動中の救急車両や飛行機の中などでも遺伝子検査が可能になる。

 ウイルスや細菌を現場で素早く特定できる同機器は、医療現場だけでなく、工場などの食品衛生、環境汚染調査、空港や港湾で感染症の水際対策に役立てるなど、幅広い分野での活用が期待される。

 既に、同試作機を研究機関や大学向けに試験的に供給し、実地検証を始めている。日本板硝子から年内に発売することを目指し、検査対象ごとの試薬や前処理技術などについて、現在準備を進めているという。

photo 左:従来のPCR装置の温度制御法。右:今回開発したPCR装置の温度制御法
photo SELFOCマイクロレンズを使用した小型蛍光検出器
photo モバイル遺伝子検査機(試作機)の写真

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