ロボットの利用では、工場用の産業用ロボットが最も進んでいるが、工場内でロボットが利用されている工程はまだまだ一部である。最大の用途が、パーツなどを運んだり並べたりするハンドリングで、次に溶接である。自動車関連で特に進んでいるといえるが、その他の領域でロボットの活用による自動化余地はまだ大きい※)。
※)関連記事:いまさら聞けない産業用ロボット入門〔前編〕
「協働ロボット」はこれらの「従来ロボットが使いにくかった領域」での活用が期待されている。組み立て作業や生産準備作業、人の作業補助などを含む軽作業の置き換えに大きな価値を発揮する見込みだ。従来の製造業の他、医薬や食料品など多岐にわたる領域でも2017年は活用が広がるだろう。
従来の産業用ロボットは、柵を含む設置スペースの問題や、価格の問題、ティーチングなどの負担などから、自動車を代表とする大型の機器を大量生産する場合に適用しやすかった。しかし協働ロボットを活用することで、簡易な前組み立てなどをロボットが行い、本組み立てを人間が行うというような使い分けが可能となる。また軽量であるため、台車などをつけて自由に動かしながら使うようなことも期待されている。
特に将来的な発展を期待して、開発が進んでいるのが、無人搬送車(AGV)と協働ロボットを組み合わせた自走式ロボットとしての活用である。
自走機能を持つことで、棚に置いてあるものをピックアップしたり、ケースの中から部品を取り出して、製造工程に配置したりすることなどが可能となる。さらに双腕ロボットなどであれば、移動しながら部品を組み立てることもできる。また完全な自律化でなくても人が自走式ロボットを連れ歩いて作業を行うことなども可能だ。
こうした自走式協働ロボットへの関心が急速に高まった理由の一因としてあるのが、インダストリー4.0を代表とするスマートファクトリー化の動きである。インダストリー4.0が目指すのはマスカスタマイゼーションとされており、これを広範囲において実現するためには、注文などに合わせて自由に変更可能な柔軟な製造ラインが必要となる。自走式の協働ロボットは人と協調しながら、生産リソースを柔軟に変更できる。そのために将来的なスマートファクトリー化に必須の技術とみられているのだ。
「協働ロボット」は、ハードウェアとしてロボットの利用障壁の解消に貢献しているが、利用領域の真の拡大のために乗り越えたい課題が「ティーチング問題」である。ロボットは基本的にはプログラミングにより決められた動作を高精度で行うというのが役割となる。この動作を決める(作る)作業がティーチングだ。しかし「改善活動」などで日々ラインなどの変更が入る中、毎回1台1台ティーチングする作業は製造現場にとって大きな負担となっていた。そのため“作業に見合う価値”を発揮できる重作業での利用に偏っていたという面もある。このティーチングの簡略化が進まない限りは、ロボットの実装拡大は難しい。
2016年度の「第7回ロボット大賞」では、ティーチレスでばら積みピッキングができるMUJINのロボットコントローラー「PickWorker」が大賞(経済産業大臣賞)を受賞した※)が、ピッキングに限らずティーチレス化が求められている。2017年はさらに多くの領域でティーチング負荷を軽減する技術の登場が期待されている。
※)関連記事:ロボット大賞、ティーチレスでばら積みピッキングできるコントローラーが受賞
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.