接続機能を持つスマート製品により、デジタル(サイバー)とフィジカルが密接する世界が実現できるようになったとき、取り残されることが懸念されるのが「人間」の存在である。
ヘプルマン氏は「力と一貫性、反復性などにおけるフィジカルの領域、大量のデータの格納と短時間での解析や処理能力などの強みを持つデジタルの領域に加え、人間にもこれらのフィジカルやデジタルの領域ではできない強みを持っている。例えば、何か事故などが起きたときにとっさに対応できる物理的な器用さや創造性、奇抜さや批判的思考などだ。こうした強みは、既存のデジタルやフィジカルの領域では実現が難しい。これらのデジタル、フィジカル、人間の強みを組み合わせることが強みだ」と述べている。
従来は、サイバーフィジカルシステム(CPS)に象徴されるように、こうした融合の動きにおいて人間の存在をどう取り込むのかという点があまり議論されてこなかったが、こうした人間の能力を組み合わせる鍵を握るのが拡張現実(AR)であるとヘプルマン氏は主張する。
ヘプルマン氏は「人間はフィジカルの世界とデジタルの世界を個別に体験することになり、それぞれが融合した世界を体験することが難しかったが、ARやVR(仮想現実)を活用することで、これらのサイバーとフィジカルが融合した世界を人間が活用することができるようになる」と述べている。
例としてヘプルマン氏が挙げたのがフランスのテニスラケットメーカーのバボラ(BABOLAT)のソリューションである。バボラは、グリップ部分にセンサーと通信機能を内蔵したテニスラケット「Play ピュア ドライブ」という製品を発売した。これは、センサーによりボールの速度やスピン、インパクトエリアなどのテニスのプレイの内容をスマートフォン向けのアプリで把握・分析できるというものだ。
ヘプルマン氏は「ARにより人間はより優れた判断がより短時間に可能になる」と考えを述べている。
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