ダイハツ工業は2010年から2014年にかけて、軽自動車市場での女性シェアを10ポイント落とした。子どものいない女性に向けたラインアップはフルモデルチェンジを1度も実施していない「ムーヴ コンテ」「ミラ ココア」しかなく手薄になっていた。新型軽自動車「ムーヴ キャンバス」でシェア回復を狙う。
ダイハツ工業が2016年9月7日に発売した新型軽自動車「ムーヴ キャンバス」は、軽自動車市場での女性シェアを回復する役割を担う。同社は2010年時点、未婚/新婚/子育て中の女性市場で40%超のシェアを握っていたが、2014年にはシェアを約10ポイント落としている。
子育てに向けたモデルは「タント」が車名別販売順位で上位にランクインするものの、未婚や子どものいない女性に向けた「ムーヴ コンテ」(2008年発表)や「ミラ ココア」(2009年発表)はフルモデルチェンジを1度も実施しておらず、鮮度が低下していた。
そのような中、ムーヴ キャンバスは女性の中でも、親と同居する30代以降の独身女性をターゲットに絞り込み、手薄になっていた女性向けラインアップを強化する。
ムーヴ キャンバスが対象とするのは、価格よりも利便性や所有の満足感を優先できる環境の女性だ。
ダイハツ工業の調査によると、親と同居する女性は親の意向を聞くことで購入資金の全額もしくは一部を親に負担してもらうケースが過半数を占めており、購入予算に余裕があるといえる。また、親元で暮らす未婚女性は、平均購入額が全体より8万円高い144万円で、「多少無理をしても気に入ったクルマを選ぶ」という人が65%を占める。
このような親と同居する独身女性は一定の割合を占めている。まず、女性の未婚化や晩婚化が進んでいるため、離婚や死別も含めると40代までの女性の49%が独身だ。特に30〜40代の女性は未婚者数が増え、2016年の見通しでは1995年の2倍近い394万人まで増加するとされている。さらに、40代までの未婚女性で、親と同居する人は30%を占める。
こうした女性の中でも軽自動車ユーザーに着目すると、未婚女性のうち親と同居する人は78%まで増える。年代別に見ると、軽自動車ユーザーで親と同居する未婚女性は30代と40代以降が年々増加する傾向にある。また、親娘でクルマを共用する比率も高い。
ムーヴ キャンバスは、こうした女性をターゲットとして気に入って選んでもらえるデザインを目指すとともに、親が購入資金を支援することを決められるような機能性も持たせた。
モデルライフが長くなっているとはいえ、女性向けという点ではムーヴ コンテやミラ ココアといったモデルと食い合いになりかねない。これに対し、ダイハツ工業 ブランド・DNA室 主査の北野恵睦氏は「ムーヴ キャンバスは両側スライドドアを採用した点で、(2モデルとは)ターゲットが違う。また、ムーヴ キャンバスは、“テイスト系”でシンプルなコンテとは異なり、狙うユーザーを絞り込んでいるので、食い合わない」と説明する。
また、同社のデザイン担当の説明員は「ミラ ココアを若い女性に向けたエントリーモデルと位置付けているのに対し、ムーヴ キャンバスは親娘ともに大人が使うことを踏まえたデザインとした」と話す。
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