災害対応にはロボット技術の活用が期待されており、研究者や技術者の育成を目的とした「レスキューロボットコンテスト」が毎年夏に開催されてる。ここでは2016年8月6〜7日に実施されたコンテストの概要と結果をお届けする。
大震災が発生した。
日ごろからレスキューロボットを研究開発しているチームの元へ、間髪入れず、被災地上空を飛ぶヘリコプターからの映像が送られてきた。現地からの限られた情報を検討し、レスキュー活動方針の打ち合わせが行われる。二次災害の恐れがあるため、レスキュー隊員が被災地に赴くのは危険が大きい。遠隔操縦でガレキ除去、要救助者の発見救助が行えるレスキューロボットに出動が下された。
「レスキュー活動、開始!」
号令とともに、レスキューロボットが要救助者を救うため被災地に向かう。
2016年8月6日、7日に、神戸サンボーホールにてレスキューロボットコンテスト(以下、レスコン)が開催された。今回で第16回目を迎える本コンテストには、全国から24チームの応募があり、予選を経て14チームが本選に出場した。
2011年3月に東日本大震災が発生して以来、レスキューロボットに対する期待と関心は高まっている。そして2016年4月には熊本を中心に大型の地震が発生し、その余震は今でも続き、多くの住民が避難生活を余儀なくされている。
震災を経験した方々や、身近な人から被災時の状況を聞いている人は、本稿で伝えるレスコンのロボットやその活動報告に対して「現実の被災現場で役に立たないのでは……」と思われるかもしれない。
レスコンでは、6分の1サイズの市街地模型フィールド上でロボットがガレキを除去し、要救助者役の人形(公式愛称:ダミヤン)を救助する。仮にロボットを6倍したところで、実際の救助に当たれるわけではない。
しかし、このレスコンは現実のレスキュー活動を念頭において実施されていることを多くの方に知ってほしい。
レスコンが発足したのは、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災がきっかけだ。当時、甚大な被害をうけた神戸で地域の救助活動にあたりながら「なぜ、サンダーバードが助けに来てくれない!」と強く思ったロボット工学の研究者達は、世の中にレスキューロボットが存在しないことに気がついた。阪神・淡路大震災は、ロボット研究者が初めて体験する大震災だったのだ。
この気付きから有志が集い、ロボット工学と防災工学を融合したレスキュー工学を提言。2002年に国際レスキューシステム研究機構(IRS:International Rescue System Institute)が設立された。しかし、レスキューロボットが実現するまでには、長い年月が必要となる。研究を継続するために、若手技術者の育成も不可欠だ。
そこで、高校生や高専生、大学生が関心を持ち、自発的に取り組む課題としてレスコンが企画された。若手技術者の研究活動をコンテストとして披露することで、観客に防災・減災の意識を高めてもらう啓発活動としての意義も込められている。
こうしたバックボーンをもつのがレスコンだ。コンテスト形式をとっているため、ミッションの達成にはポイントが与えられるが、チーム間での勝敗を競ってはいない。大会の目的は、各チームがレスキューコンセプトを検討し、実現するためのアイデアをシステム設計したロボットで、ベストなレスキュー活動を実現することだ。
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