ソニーが村田製作所に電池事業を売却――一般消費者向け製品は維持製造マネジメントニュース

ソニーと村田製作所は、ソニーグループの電池事業を村田製作所グループが譲り受けることで意向確認書を締結した。ソニーの電池事業は、リチウムイオン二次電池を世界で初めて商用化したことで知られるが、ここ数年は構造改革が求められる状況にあった。

» 2016年07月28日 16時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 ソニーと村田製作所は2016年7月28日、ソニーグループの電池事業を村田製作所グループが譲り受けることで意向確認書を締結したと発表した。今後、村田製作所とソニーは、電池事業の精査と協議を経て、2016年10月中旬をめど確定契約を締結することを目指す。その後、関係当局の承認などを得て2017年3月末をめどに取引の完了を計画する。

 ソニーグループで譲渡される対象は、ソニーの国内100%子会社であるソニーエナジー・デバイスが営んでいる電池事業、ソニーが電池事業に関して中国とシンガポールに保有している製造拠点、ソニーグループが国内外に保有している販売拠点と研究開発拠点のうち電池事業に関連する資産や人員としている。

 ただし、現在ソニーブランドで展開されているUSBポータブル電源やアルカリ乾電池、ボタン・コイン電池、モバイルプロジェクターなどの一般消費者向け販売事業に関しては対象としない予定だという。

 ソニーは、1975年から電池事業に取り組み、1991年にはリチウムイオン二次電池を世界に先駆けて商品化した電池の老舗企業である。主にエレクトロニクス製品のキーデバイスとなる各種の先進的な電池を開発し、展開してきた。ここ最近はソニー製品をはじめとするスマートフォン向けのポリマー電池などを伸ばし、その収益力改善に取り組むとともに、技術的優位性のある電動工具などパワーツール向け液系筒型電池へのリソースシフトなどを進めてきていた。

 ただ、電池事業はソニーが最終製品を展開する製品以外の市場開拓が遅れ、車載向けや定置向けなどに再三チャレンジするもののなかなか市場での地位が確保できず収益性を安定できない状況が続いていた。さらに、ソニーなどが得意とするハイエンドスマートフォン市場が冷え込みを見せる中、関連デバイスである電池事業の採算も悪化。ここ数年は構造改革を進める一方で、事業の減損が相次ぐ状況になっていた。

 一方の村田製作所は「中期構想2018」における経営目標の実現にむけ、通信市場での競争優位の追求と注力市場である自動車、ヘルスケアとならび、エネルギー分野において、新たなビジネスモデルや顧客価値の創出に取り組んでいる。この中で高い技術力とグローバルでの事業展開に経験と実績のあるソニーの電池事業に大きな魅力を感じており、電池事業をエネルギー分野の中核事業に位置付け、成長・拡大をさせる狙いを示す。

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