通勤で使うSuicaをオフィスの鍵にできる、後付けスマートロックが登場する。月額制のレンタルで従業員数の少ない中小企業の労務や防災、省エネなどオフィス運営を効率化する。
フォトシンスは2016年7月7日、“スマートロックロボット”「Akerun(アケルン)」の新製品「Akerun Pro」を同年7月23日より販売開始すると発表した。NFCによる開閉に対応、提供方法も月額9500円でのレンタル提供に絞るなど法人需要を強く意識した。
Akerunはドアのサムターン(つまみ)の上に取り付けることで、スマートフォンアプリからカギの開錠/施錠ができる、いわゆる外付け式のリモートロック。既存製品は一般家庭向けを狙っていたが、新製品はオフィスでの需要を見込み、搭載電池による開閉回数の増加やNFCによる開閉機能の追加、提供形式を不良時交換費無料のレンタル形式に絞るなどの改良を加えた。
外付けリモートロックとしての基本的な構成は既存モデルと変わらない。Akerunとスマートフォンの間はBluetooth LEによる通信が行われ、スマートフォンを持ちドアの前で専用アプリを操作することでカギを開けられる。新製品ではNFCリーダーが標準で付属しており、SuicaなどのNFCカードをかざすことでも開閉が行える。
Akerun本体はインターネットに接続する機能を持たないが、開閉に利用するスマートフォンアプリもしくはゲートウェイ「Akerun Remote」を介することでインターネットに接続し、開閉記録や利用履歴をクラウドから確認できる。クラウドについてはAPIを公開する予定としており、「オフィスの全員が退室したら明かりを消す」「緊急地震速報を受信したら全てのロックを解除する」などといった活用を可能としている。
オフィスへの導入についてフォトシンスの河瀬航大氏(同社代表取締役社長)は、「プライバシーマークやマイナンバーなど企業に求められるセキュリティ要件の増加」と「電気錠の導入価格」を挙げる。
法人の事業所における扉管理については電気錠によるものが一般的だが、導入に際して場合によっては制御盤の導入までも必要となり、それなりのコストが発生する。「従業員数の少ない企業であっても電気錠のニーズは存在するが、価格的に安価とはいえない。Akerun Proならば月額9500円、しかも扉への後付けでオフィス運営の効率化を提供できる」河瀬氏は新製品の狙いをこのように語り、市場規模は1400億円を超えるとする。
「スマートロック」と名乗る製品は既に同社製品を含めて複数登場しているが、「スマートフォンを鍵にする錠前」にとどまっていると河瀬氏は指摘する。「本当の意味でのスマート(賢い)な錠前を提供することで、オフィスの効率化、生産性の向上に寄与したい」(河瀬氏)
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