公正取引委員会(以下、公取委)は、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認したと発表した。キヤノンから計画届出書の提出を受けて審査を行ってきたが、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認め、キヤノンに対する排除措置命令を行わない旨を通知した」(公取委)という。
公正取引委員会(以下、公取委)は2016年6月30日、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認したと発表した。キヤノンから計画届出書の提出を受けて審査を行ってきたが、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認め、キヤノンに対する排除措置命令を行わない旨を通知した」(公取委)という。
東芝とキヤノンは2016年3月17日、東芝からキヤノンに東芝メディカルシステムズの株式を譲渡するための契約書を締結したと発表した。しかしこの譲渡プロセスは、東芝が約5900億円の売却益を早急に求めていたこともあり、MSホールディングという“独立した第三者”を介する契約になっていた(関連記事:東芝メディカルの売却益5900億円、“第三者”を介して東芝が年度内計上へ)。
この特殊な契約形態とともに、東芝メディカルシステムズの入札で競合となった富士フイルムから買収プロセスに疑義が呈されるなどさまざまな問題があったことから、公取委は慎重に審査を進めていたとみられる。
今回公取委は、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認したものの、第三者を介した買収プロセスについて、「これら一連の行為が、キヤノンが当委員会への届出を行う前になされたことは事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあることから、今後、このような行為を行わないよう、キヤノンに対して注意を行うとともに、上記スキームの実行に関与していた東芝に対して、今後、事前届出制度の趣旨を逸脱するような行為に関与することのないよう申し入れを行った」としている。
また「今後、企業結合を計画する者が仮に上記のようなスキームを採る必要があるのであれば、当該スキームの一部を実行する前に届出を行うことが求められる」(公取委)ともしている。
公取委が企業間の買収/売却について、独占禁止法に基づく排除措置命令や警告を出す以外で、今回のような発表をすることは異例だ。今後、同様の行為を看過しない姿勢を示したともいえる。
公取委の対応について、両社は以下のようなコメントを発表している。
「本日、公正取引委員会より、今回の株式取得に関して排除措置を行わない旨、ご判断をいただきました。しかしながら、公正取引委員会からは、株式取得に関する当社の事前届出に関して、届出義務違反ではないものの違反となるおそれがある旨の注意を受けました。弊社は、これを真摯に受け止め、今後とも法令を順守し、透明性の高い経営に取り組んでまいります」(キヤノン)
「違法行為に該当しないものの、今般、公取委から今後事前届出制度趣旨を逸脱するような行為に関与しないよう申し入れをいただいたことに、弊社はこれを真摯に受け止め、引き続きコンプライアンスを前提とし、広く社会の皆さまに対して誠実な経営に取り組んで行きます」(東芝)
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