東芝は、代表執行役副社長の綱川智氏を、新たな代表執行役社長候補に決定したと発表した。綱川氏は、キヤノンに売却した東芝メディカルシテムズの社長をはじめ、東芝グループ内で一貫してヘルスケア領域を担当しており、PCや半導体といった不正会計に関わりのあった事業から縁遠い“クリーン”な人材だ。
東芝は2016年5月6日、代表執行役副社長を務める綱川智(つなかわ・さとし)氏を、同年6月下旬に開催予定の定時株主総会終了後の取締役会で選定する代表執行役社長の候補に決定したと発表した。不正会計問題を受けた経営陣刷新により、2015年7月から代表執行役社長を務めてきた室町正志氏は特別顧問に就任する予定だ。
綱川氏は1955年9月生まれの60歳。東京都出身で、1979年3月に東京大学を卒業後、同年4月に東芝に入社。1989年に東芝メディカルシステムズ・ヨーロッパ社、1993年に東芝アメリカメディカルシステムズ社に赴任し、1999年に医用システム社海外営業部長に就任した。2000年に業務管理部長を兼任してから、2001年に経営企画部長となり、2004年には再び海外に赴き東芝アメリカメディカルシステムズ社と東芝アメリカMRI社の社長を兼任。そして2010年6月、東芝メディカルと東芝の医用システム社が統合して2003年に発足した東芝メディカルシステムズの社長に就任した。なお、東芝メディカルシステムズは2016年3月にキヤノンに売却されている。
東芝メディカルシステムズの社長を4年間務めた後の2014年6月、東芝の執行役上席常務に就任。東芝メディカルシステムズを含むヘルスケア事業グループの担当役員となり、同年7月に発足したヘルスケア社の社長を務めた。不正会計問題を受けた経営陣刷新により、2015年9月に取締役兼代表執行役副社長に昇格している。
東芝社内において、東芝メディカルシステムズなどのヘルスケア領域を一貫して担当して綱川氏は、不正会計と関わりのあったPCや半導体、大規模な減損のあった原子力といった事業との関わりは薄い。2015年12月発表の経営再建に向けた「新生東芝アクションプラン」を立案した経営陣の中では最も“クリーン”といっていい。
東芝によると、今回の社長人事は「事業構造改革の進展に一定のめどが立ったことから新しい経営体制へ移行し、新体制のもと、成長軌道への回帰の具現化に取り組むことが最適であるとの判断によるもの」だという。
なお、空席となっていた会長職についても、綱川氏と同じく代表執行役副社長を務める志賀重範(しが・しげのり)氏を代表執行役会長の候補にすることを決めた。
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