日本のエンジニアには圧倒的に不足している“イノベーション力”。本当に皆さん自身が“イノベーション”を起こすには“意志”がないと始まりません。「“これからのエンジニア”の働き方」を語る連載の最終回は、理解するだけでなく実際に「アクションに移す」ことをご提案します。
これまでの連載で、これからのエンジニアに必要な“イノベーションを起こす力”について、技法やハウツーではなく、考え方やスタンスのようなものをお話ししてきました。世の中には知識や能力を身につけ磨くための本や環境はいくらでもあります。学ぶべき実例も、数えきれないほど出てきます。しかし、本当に皆さん自身が変わるには、自分自身に“イノベーション”を起こすには“意志”がないと始まりません。
これまで“イノベーションを起こす力”についてお話ししてきましたが、私個人の経験上、日本のエンジニアにはそれが圧倒的に不足していると感じています。
私がメーカーエンジニアだったとき、イノベーションに必要な2つのスキルである「論理的思考力」と「コミュニケーション力」、どちらも持っていませんでした。いや、持っていたのかもしれませんが、活用できていませんでした。自分の中に眠らせたまま、私が今まで見てきたエンジニアのように、目の前の業務の精度をいかに上げるかに必死になっていました。何かを大きく変えてやろうとも思っていませんでしたし、なるべく人と話さずに自分の大好きな技術に没頭できるこの仕事が本当に楽しいと思っていました。
しかし、とあるプロジェクトチームのメンバーに選抜されたことをきっかけに、その力のトビラをノックすることになります。今まで技術としか向き合ってこなかった私の前に突如、“問題解決手法の習得”というミッションが現れたのです。
問題解決についての経験は全くありませんでしたが、素直に・ポジティブに、そのミッションに全力でチャレンジすることを心に決めました。もちろん最初から上手くいくわけなどありません。もともとコミュニケーションは得意じゃないし、論理的思考はなんとなく分かるけど正しい方法なんて全く分からない。ひとまず動いてはみるものの、失敗し、壁にぶつかるばかりでした。
それでもさまざまなクライアントの問題解決を通してトライアンドエラーを繰り返した結果、今ではその問題解決が自分の主業務となっています。
この私の実体験から言えることは、自分の中に能力を持っていることと、それを解放し活用するということは別、ということです。
今までの連載を読みながら、「言うのは簡単だけどさ」とか、「そんなこと言ったって現場は違うし」という感想を抱いた人も、少なくないかもしれません。でも、それではイノベーションは起きません。
眠っている力のトビラを開けるカギは、新たなミッションを素直に受け入れ、ポジティブな姿勢でアクションに移せたからだと思っています。「会社が・上司が無茶を言ってきた」「やったことないからできっこない」「結果として失敗したらどうしよう」といった、不毛な心配をしている人には、永遠にトビラは開かないでしょう。
皆さん、この連載を読んで「わかった気」になっただけで終わりにするのではなく、ぜひ実際にアクションに移してみてください。
日々の業務で何かの壁にぶつかったときや、ひとつの課題を見つけたときに、「コミュニケーション力」を意識し、自分の考えを伝え、多くの仲間から情報を得たり、手伝ってもらえるように働きかけるとか、いつもは箇条書きでアイデアを並べるだけだったけれど、それらを論理的に整理して考えてみたりとか、とにかくこの連載で発見していただいたエッセンスを積極的に取り入れ、今までの自分のやり方を少しずつ変えてみてください。
そうして、実際にアクションに移すことで、いつか絶対に失敗します。それこそが「学び」なのです。「知らなかったことを『Wikipedia』で調べてスッキリする」「ビジネス本を読んでなるほどと理解する」では失敗はできません。成功はただの収穫でしかない。失敗こそが種まき。その失敗から人は学び、新しい気づきを得て、そこから全てが、そう、イノベーションが生まれるんです。
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