PDMにおいては、さまざまなフォーマット(WORD、EXCEL、PDFなど)が設計情報に関連付けて管理可能なことが利点としてよく挙げられますが、今回は、“まずは”それらを行わないこととし、3D CADデータと図面の管理に特化しました。
本来は設計資料もPDMで管理する方がよいと私は考えますが、この資料を見たいのは設計者だけではありません。今回はPDM利用者をメカ設計に限定したので、設計資料をPDMに保存してしまうと、メカ設計者以外は設計資料が見られなくなります。社内には、文書管理のファイルサーバがあり、上手く運用されていたので、それを引き続き利用することにしました。
実は過去に、設計資料管理をPDMに保存しようと決めたにも関わらず、その実現に至らなかった経験があります。なぜ、それができなかったのか? それを行うためには、ツールの整備ではなくて、「適切な設計計算書を書く」「機器選定資料を残す」など設計作業を変えることがまず必要だったからだと考えています。
PDMでどうしてもやらなければならないことは、版管理だと考えました。装置設計における流用の事情に関してはこれまでの回でもお話してきましたが、ともあれ流用や設計変更を管理できなくては、「最新のものとは何か」、過去の製造実績(設計実績)にさかのぼることもできません。流用においては、どの版のデータを使用するのかを、誰もが分かるようにすることが重要なポイントです。
これを誤ると、以下のような問題の解決ができません。
PDMの流用先や流用元を調べる機能は、流用設計を行う上でもとても便利に使えます。
これまでは、属人的な“経験”の中で、流用管理がされることが多くありました。機械構成を示すドキュメントとしての形でその流用を示すような工夫もされていました。その上で、製番ごとに全データを複製することも行われていました。
このように、全てを製番ごとに全データを複製管理しようとしてしまうと、データは膨大になるばかりか、本来、関連性のあるはずのデータが、関連性を持たないデータに……、もっと簡単に言えば、「製番ごとにユニークなデータ」になってしまうこともあります。
もちろん、参照関係のデータ構造を持つかどうかということもあるのですが、このような製番複製の場合は、参照関係も持たず、その名前も変えられてしまうことも多く、関連性を管理できないものになります。
設計者自身にとって、製番ごとに全ての複製データを作ってしまう形の管理は、運用上、楽です。自分が作成するデータだけ責任を持てばよく、他への影響は無視できるからです。しかし属人的な管理に結びついていくので、他の設計者や、設計工程以降の人たちは、その流用の詳細は分からなくなってしまいます。
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