日本IBMとソフトバンクは、自然対話型人工知能「ワトソン(Watson)」の日本語版の提供を開始する。自然言語分類や対話、検索およびランク付け、文書変換など6つのアプリケーションをサービスとして展開する。
日本IBMとソフトバンクは2016年2月18日、自然対話型人工知能「ワトソン(Watson)」の日本語版の提供を開始することを発表した。ワトソンを活用した新しいアプリケーションの開発に利用できる6種類のコグニティブ・サービスを提供する。
ワトソンは、IBMが研究開発する人間の認知に関わる情報処理(コグニティブ・コンピューティング)の総称である。2006年から研究開発プロジェクトをスタートさせたが、2011年に自然対話型で回答が導き出せる人工知能として、米国のクイズ番組「Jeoparady!」に出場し人間に勝ったことで一気に注目を集めた。ワトソンの特徴となるのが、自然言語による対話型のインタフェースと分析結果の視覚化という点だ。従来の分析はデータサイエンティストなどデータ分析の専門家が必要なケースも多かったが、ワトソンであれば質問を重ねていくだけで、自動で最適な分析シナリオや回答を判断し、それを提示することができるようになる。
既に英語版では2011年から医療診断や金融関係のアドバイスなどで先行導入を進めてきていたが、2015年2月にソフトバンクとの提携により日本語化を進めることを発表。今回同開発が完了し日本語版の提供を開始することを発表した。
日本IBM代表取締役社長のポール与那嶺氏は「もともと日本の研究所から生まれた技術が里帰りしたようなものだ。発表から1年間ソフトバンクと協力して開発を進めてきたが、タイミングとしても完璧な形でリリースできるようになったと考えているIoT(Internet of Things)やソーシャル技術の進展、企業のデジタル化の加速など、データが大きく拡大する環境が広がっている。その中で非構造化データは大きく拡大している。ただこれらのデータを理解することが必要だ。ワトソンはこれを理解し、仮説を立て、推論し、推薦し、さらにこれらを学習することができる」と述べている。
今回IBMが日本語で提供するのは以下の6つのサービスである。これらをAPI(Application Programming Interface)として提供し、他のサービスや製品などに組み込んで提供することが可能だ。
「自然言語分類」により、日本語において意図や意味を理解し、質問がさまざまな方法で行われた場合でも正しい解答を得られるようになる。また「対話」により人のスタイルに合わせた会話を生み出すことで自然な応答を可能とする。「検索およびランク付け」ではデータの中にある「信号」を検知し、機械学習を活用して情報検索性を向上する。「文書変換」では異なるフォーマットのコンテンツをワトソンで使用できるフォーマットに自動変換する。また、「音声認識」および「音声合成」によって日本語で人と会話を行うような形で、話しながら自然に求める結果を得ることができるようになる。
これらにより、今までは人間を介して行われた接客や応対などについても、ワトソンで行うことができるようになる可能性が生まれている。記者会見のデモでは、アパレルショップでのチャットのやりとりで自然な会話ができる様子を示した。
日本IBMと戦略的提携を結び、ワトソン日本語化に向け共同開発を進めてきたソフトバンクの代表取締役社長 兼 CEOの宮内謙氏は「非常にワクワクしている。ソフトバンクでかつてないくらいリリース前から引き合いを得ている。既に150社以上のパイプライン(見込み客・案件)がある」と手応えを語る。同社ではまずは自社内での活用事例を確立するために、6つのプロジェクトを進行中だとしている。
日本IBMおよびソフトバンクでは、2015年10月からエコシステムパートナーの正式募集を開始し既に10数社がパートナーとして選定されているという。これらのパートナーとサービス開発を行い、コグニティブビジネスの新しい市場創造を行う方針だという。
では、製造業ではワトソンはどういう領域で使えるのだろうか。
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