トヨタ自動車は、レクサスブランドのフラッグシップハイブリッドクーペ「LC500h」に搭載する「マルチステージハイブリッドシステム」について発表した。現行の「2段変速式リダクション機構付のTHS-II」に4速ATを追加して、エンジンと2個のモーターという3つのパワーソースを自在に制御できることが特徴。
トヨタ自動車は2016年2月18日、レクサスブランドのフラッグシップハイブリッドクーペ「LC500h」への搭載を予定している、新開発のハイブリッドシステム「マルチステージハイブリッドシステム」について発表した。LC500hは、「ジュネーブモーターショー2016」(一般公開日:2016年3月3〜13日)で公開される。日本市場での発売は2017年春の予定だ。
マルチステージハイブリッドシステムは、レクサスブランドの「LS」や「GS」といった大型FR車に採用されている「2段変速式リダクション機構付のTHS-II」を改良したハイブリッドシステムだ。低速域と高速域の両方に対応する2段変速式リダクション機構やプラネタリーギヤを用いた動力分割機構はそのままに、システム後端に4速ATが追加されている。これにより、エンジンと2個のモーターという3つのパワーソースを自在に制御して、走行の駆動力として利用できる。従来のTHS-IIの場合、2個のモーターのうち、1個は走行に利用できるものの、もう1個は発電用にしか使えなかった。4速ATが追加されているが、従来のTHS-IIと同様に変速機としてCVT(無段変速機)も搭載している。
なお、トヨタ自動車はマルチステージハイブリッドシステムを「世界初」と発表している。ここでいう世界初とは、「プラネタリーギヤを使った動力分割機構を持つハイブリッドシステムにATを適用したこと」(同社)だという。
LC500hに搭載するマルチステージハイブリッドシステムは、排気量3.5l(リットル)のV型6気筒ガソリンエンジン「2GR-FXS」と、小型軽量化したモーター、リチウムイオン電池パックを組み合わせている。2GR-FXSは、SUVの「RX450h」に採用されているが、LC500hでは使用領域を高回転側にシフトしている。RX450hでは、最高出力が193kW(6000rpm)、最大トルクが335Nm(4600rpm)だったが、LC500hでは最高出力が220kW(6600rpm)、最大トルクが348Nm(4900rpm)となっている。モーターを含めたシステム最高出力も、RX450hの223kWから264kWに増えた。
エンジンの高回転化と合わせて、低速域ではエンジン使用領域を高回転側に拡大し、低速から力強い駆動力を生み出せるような制御を行っている。時速0〜100kmの加速時間は5秒以下で、GSの5.6秒よりも短い。また、低速域から高速域まで、システム効率の高い動作点を選択するとともに、モーターだけで走行するEV走行領域も拡大した。これにより、従来よりもドライバーの加減速に従ってエンジン回転数が変化を感じられるような制御になっているという。
スポーティーな運転を楽しめるように、マニュアル変速機の感覚を味わえる「Mモード」も用意した。
小型軽量化したモーター、レクサスブランドのハイブリッド車として初となるリチウムイオン電池パックの採用により、4速ATを追加しているにもかかわらず、ハイブリッドシステムの重量は2段変速式リダクション機構付のTHS-IIと同等である。
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