構造解析分野のトピックとしては「ANSYS Mechanical」に基板モデル関連機能を実装したことを挙げた。従来は基板の構造解析を行おうとすると、配線パターンやチップなどの構造と、銅や樹脂などのさまざまな材料によりメッシュが複雑になってしまっていた。メッシュを全て切るのが理想だが、現実的には難しい。そのためECADファイルを直接メカCAD側に取り込み、特性を取り込み、バックグラウンドでマッピングしながら構造モデルに入れ込んでいく。ANSYSで自動的にマッピングするため、強度解析などがより容易に高精度で行えるという。
構造解析ソルバのパフォーマンスについても向上させた。有限要素法は高速化、特に並列計算においてはパフォーマンスを十分に発揮できないという。そのため大容量メモリで一括で計算するのが一般的だが、マシンのパフォーマンスが上がってもメッシュが詳細になるため、“いたちごっこ”状態になっていた。このパラレルを上げるコーディングに取り組んできた。それが「Distributed ANSYS(DANSYS)」ソルバーだ。
図のはんだボールの事例は400万自由度の非線形モデルで、バージョン16.0では500コア付近からパフォーマンスの低下が見られるが、バージョン17.0では1000コアでも維持できているという。
またANSYS Mechanicalのライセンス形態の変更についても紹介した。従来はアドオンライセンスなどは必要に応じて個別に購入する形だったが、今回から「Mechanical Pro」「Mchanical Premium」「Mechanical Enterprise」の3つに統合し、既存のアドオンライセンスは全てこの中にパッケージ化したという。Mechanicalはこの3本の形態のみで提供する。Proが基本パッケージで、Enterpriseは全ての機能が含まれる最上位版になる。
流体解析分野では、ノード間通信などのボトルネックを改善して並列効率を向上させた「ANSYS Fluent」で、12万9千コアでの計算が可能なことを示した。
下図中央のエンジンのシリンダーでは、シリンダーヘッドが潤滑剤の油も考慮しながら上下に動いているモデルを例に紹介した(比較用の単純な解析事例)。
またメッシングについては、従来は一度計算点を作った上で不必要なところをマージしていたが、これを1段階でまとめて生成できるようにした。これによりメッシュ作成時間と計算時間の短縮を可能にしたという。またGUIの改善や形状最適化機能の追加なども行ったという。
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