同プロジェクトに関わる以前から、さまざまなメディア・コンテンツをプロデュースする立場として攻殻機動隊を支えてきた武藤氏。近年のIoTやスタートアップを取り巻く状況を踏まえ、攻殻機動隊 REALIZE PROJECTにおける情報、何より知的財産の取り扱いについては、非常に気を使ってきたという。
「攻殻機動隊 REALIZE PROJECTを始動させたタイミングでは、大々的に発表を行ったが、ハッカソンやコンテストの実施に関してはあえてクローズドな環境を構築して行った。観覧者などは一切募集せずに、チームによる発表に関しては審査員のみが見るといった具合だ」と武藤氏は振り返る。また、イベント終了後、参加者向けに懇親会を開いても知財の観点から最低限の情報のみを共有する程度で、場合によっては何も情報を与えないということもあったそうだ。
「参加者のアイデアやプロトタイプ(成果物)は、知的財産権保護・侵害予防を目的として、攻殻機動隊 REALIZE PROJECT事務局の知財チームによる侵害予防に関する簡易調査を受ける。また、参加者の希望に応じ、知的サポートを受けることも可能だ。攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARDでのビジネスマッチング、攻殻機動隊の版権を利用した商品化も視野に今後も支援を続ける」(武藤氏)。
攻殻機動隊は、漫画、TVアニメ、映画と多くのメディアに展開しているコンテンツであり、その権利も多岐にわたる。だからこそ、このプロジェクトは、参加者のアイデアや成果物への権利保護、知的財産への配慮が可能になる。
攻殻機動隊 REALIZE PROJECTを開始し、武藤氏が常に感じていたのは、ハッカソン/コンテスト参加者や、審査員をはじめとする関係者、そして大会を支援してくれた自治体などの同プロジェクトに対する「熱量」だという。
「義体(ロボット)」「電脳(人工知能・ネットワークセキュリティ)」という現在注目される、要素が盛り込まれた攻殻機動隊の世界観――。「皆、攻殻機動隊の世界観を実現するということに対して、これが自分のやりたかったことだ!! というように自然に受け入れてくれている。これほど多くの人に影響を与えてきた日本が世界に誇れるコンテンツと、それを現実のものにしようとするテクノロジーとがコラボレーションするというのは、世界に類を見ない日本らしいプロジェクトではないか」と武藤氏は述べる。
プロジェクトの立ち上げ当初から、ほぼボランティア状態で運営を取り仕切ってきた実行委員会のメンバーたちの思い。そして、その取り組みに賛同し、ハッカソンやコンテストに参加してくれた一般の人たちや審査員の熱量を、もっと多くの人に知ってもらいたい、参加・応援してもらいたいという思いから、攻殻機動隊 REALIZE PROJECTに寄せられた製品アイデアや企画の実現を支援するためのクラウドファンディングをスタートさせた。
「新たに始まるクラウドファンディングでは、支援者がこれぞと思うチーム作品への投票ができること、攻殻機動隊 REALIZE PROJECTで大会審査に参加いただいた先生方の特別講義やシンポジウムの(特典付き)参加チケットの先行販売という体裁で参加できることで、より多くの方々に注目してもらい、体感してもらうことで、攻殻機動隊の世界を実現するかもしれない製品の開発や、スタートアップを応援してもらいたい。そして、こうした活動を行いながら、プロジェクトを継続拡大していきたいと考えている」(武藤氏)。
2016年2月11日に開催される攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARDにて行われる、神山健治監督、冲方丁氏らを招いた特別トークショー「攻殻シンポジウム」の模様を、同年2月16日から開幕する「ITmedia Virtual EXPO 2016 春」にて期間限定配信を行う。
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