ブリヂストンのエンジンマウント用防振ゴムと後部座席の座面用ウレタンシートパッドがトヨタ自動車の新型「プリウス」に採用された。ブリヂストンは低全高/低重心を追求した新型プリウスのTNGA(Toyota New Global Architecture)プラットフォームに対応するための技術を盛り込んで開発した。
ブリヂストンは2015年12月17日、東京都内で記者会見を開き、エンジンマウント用防振ゴムと後部座席の座面用ウレタンシートパッドがトヨタ自動車の新型「プリウス」に採用されたと発表した。防振ゴムや自動車用ウレタンシートパッドは、同社の多角化事業を支える製品だ。開発では「低全高/低重心を追求した新型プリウスのTNGA(Toyota New Global Architecture)プラットフォームに対応するための技術を盛り込んだ」(ブリヂストン 化工品直需事業本部長の鈴木康弘氏)という。
新型プリウスの車両プラットフォームは、走行性能を向上するため低全高/低重心を追求して新規に開発された。3代目である先代プリウスと比較して全高が20mm、カウル高さが62mm、リヤエンドが55mm下げられている。また、駆動用バッテリーを荷室下部から後部座席の下側に移すレイアウト変更も実施した。
このため新型プリウスは、エンジンのマウント体格を低くしてエンジンフードの高さを下げたり、後部座席の居住性を確保したりすることが求められた。ブリヂストンはこれに対応したエンジンマウント用防振ゴムと後部座席の座面用シートパッドを開発。プリウス向けでは両製品ともに初受注となる。
新型プリウスは後部座席の座面を薄肉化することが課題となった。後部座席の乗員の頭上のスペースを確保しながら座席下に燃料タンクや駆動用バッテリーを配置するため、シートパッドによって省スペース化を図る必要があったためだ。
しかし、単純にシートパッドを薄くすると、クッション感や振動吸収性が低下するとともに、座骨に圧力が集中して座り心地や乗り心地が悪くなる。高密度な部材に変更すれば乗り心地と薄肉化を両立できたが、その場合重量が増加してしまうため、エコカーとして良好な燃費性能を目指すプリウスには適さなかった。
同社はシートパッドの素材であるウレタンフォーム(ウレタン)のセルの構造と分子構造を最適化し、密度を上げずにシートの適度な硬さと振動吸収性を確保した。ウレタンは、発泡した泡同士の骨格と膜でセルが構成されている。セルの構造や化学的な樹脂構造の設計により、シートの座り心地が変わる。
新開発のウレタンと同社の発泡成形技術により、先代プリウスと比較して3割の薄肉化を実現した。先代プリウスのシートパッドの厚みが110〜120mmだったのに対し、新型プリウスに採用された同社のシートパッドは70〜80mmに省スペース化した。シートの快適性は、タイヤ開発用のテストコースで走行試験を実施し、実走行を基に評価を行った。
ブリヂストンがプリウス向けに納入するのは後部座席の座面のシートパッドのみ。後部座席の背もたれや運転席/助手席は受注できていない。「自動車メーカーは座席ごとに異なるシートメーカーから調達する。シートメーカーは、シートパッドを内製したり、素材メーカーから仕入れたりする」(ブリヂストン 化工品直需事業本部長の鈴木康弘氏)ためだ。
新型プリウス向けのシートパッドで培った技術は、今後も積極的にアピールしていく。鈴木氏は「乗り心地に直結する座面はシートの中でも難しい部分ではないか。その難しさの中で、材料技術を武器に強みを発揮していく」としている。また、他の薄肉化技術も生かしてシートパッドの事業拡大につなげる。
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