機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は設計現場における3Dデータ活用について、もう少し掘り下げて考察する。
前回は「3Dデータ活用を考える」ということで、全社での3Dデータ活用シーンを考えてみました。ここから見えてくるように、3D CADを使用した詳細設計による成果物である3Dデータは、全社横断のデータとしてさまざまなシーンで使用することが可能です。単なる設計ツールの置き換えで得られる効果だけではなくて、社内の多くの工程で効果を得ることが可能だということを理解いただけたのではないでしょうか。
昨今、大規模な総合展示会をはじめ、CADベンダーのプライベートカンファレンスが開催されています。どこも会場を埋め尽くさんばかりの人であふれています。私もこの10年来このようなカンファレンスに多く参加していますが、年々、参加人数は増え続けていると感じています。
さてそういったイベントに参加する皆さんは、何を求めているのでしょうか。私自身のことを言えば、まずは3D CAD導入のための調査の一環、次に自社が目指す推進活動におけるヒントを得るため。そして自社運用CADと未採用の3D CADの新技術調査、さらに推進者との交流による情報交換というものでした。縁あって、私自身も取り組み事例をカンファレンスでお話しさせていただいたこともあります。
日本各地で、モノづくりに関する懇談会的な活動や、小規模〜大規模なプロジェクトが行われています。「強いモノづくり」「強い会社作り」「モノづくりを基盤とした地域振興」といったさまざまなテーマを掲げ、3D CAD・3Dデータ活用、3DプリンタやCAEなどを用いた業務革新、設計者教育や管理者教育などの議論や推進活動が行われています。
私は、日本国内で「3D CAD運用の二極化」が起きていると感じています。先行成功ユーザーは、どんどんその活用を深く、また活用範囲を広げようとしています。しかし、一方のユーザーは2D CADからの移行ができない、またはしないという状況でしょう。
前者のユーザーは企業の戦略として、計画的な3D CAD展開、3Dデータ活用展開を進め、効果を実感しながら、新たな手法やソリューションに対してもその検討と評価を進めています。一方で、後者のユーザーからは、「2D CADに比べて3D CADは操作が大変だから、2倍以上の設計時間がかかる」とか「3D CADは高価だから、うちには無理」ということで、3Dデータ運用の入り口となる3D CAD運用に対して足踏みを続けているということを聞きます。
確かに私も「最初は時間がかかる。慣れても2D CADよりも早い時間では設計できないかもしれない」「3D CADは2D CADに比べれば高価である」と考えます。全ての設計製造関連企業において設計の3D化が可能であるわけではないでしょう。
しかし、「設計改革とは何なのか」でお話ししたような全社活動的な考え方で、「社内の多くの工程で3D CADの効果を得られるだろう」と分析した企業であれば、作業負荷や投資額以上の効果が得られると私は確信しています。
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