古友氏 チームHAKUTOは、3本の柱で構成されています。1つ目は運営母体であるispacで、2つ目は共同研究契約をしている東北大学です。そして3つ目は「PRO BONO」というボランティアメンバーの集団です。本職を持ちながら宇宙開発にも携わりたいという方に参加をしてもらっています。
今日はHAKUTOが開発している月面探査車のプリフライトモデルをお持ちしました。宇宙へ実際に飛ばすものをフライトモデルと呼んでいるので、その前段階ということでこちらをプリフライトモデルと呼んでいます。宇宙へ飛ばす際にはロケットの振動や温度差による負荷が掛かります。そういった環境に耐えるための熱真空試験や振動試験を一通り終えて「Flight-Ready(打ち上げ可能)」かを確認したモデルです。
enmono 宇宙へ持っていくための試験をクリアしたものということですね。
古友氏 はい、全てクリアしました。HAKUTOの月面探査車は2台構成になっていて、大きい方が8kgくらい、小さい方が2kgくらいで小型軽量なのが特徴です。2年くらい前に中国が月着陸船を降ろしているんですけど、その重量が650kgで大きさは軽自動車1台分ほどでした。それと比較するとものすごく小さい探査車になっています。
民生品を多用していて、開発のリードタイムが非常に短く、低コストで開発できます。360度カメラを備えていて、月面ではその映像を見ながら運用します。ホイールが特徴的で、トゲトゲがたくさんついています。月の上はレゴリスというパウダー状の非常に細かい砂で覆われていて、地球を走っている普通の自動車のようなタイヤだと滑ってしまって前に進むことができません。そういう環境条件が悪い月面でも滑らずに確実に走ることができるタイヤ・ホイールを考えています。
もう1つの特徴がテザー(つなぎなわ)で、2台のローバーをこのテザーで結んで運用しようという狙いがあります。その目的は月にあるといわれている大きな縦穴の探査です。縦穴の中は放射線が少ないのではないかといわれていて、将来、人間が降り立った時、そこに宇宙基地を作るという構想があるんです。でも、まだ誰も降りたことがないんです。その穴の入口で4輪のローバーを待たせておいて、テザーで結ばれた小さい方のローバーを穴の中に投入して探査するということを考えています。
今のところこの月面探査車を2016年後半に打ち上げたいと思っています。米国のSPACE X社のロケットに載せてもらって、同じくアメリカのASTROBOTIC社というチームが着陸船(ランダー)を開発しているので、そこに相乗りするかたちで月を目指します。ASTROBOTIC社もローバーを作っていて、月に着いたらそのローバーと「よーいドン」で競争になるので、月面でF1レースみたいなことができたらいいですね。
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