クルマの自己診断機能「OBD2」の用途は“診断”だけじゃないいまさら聞けない 電装部品入門(22)(4/5 ページ)

» 2015年11月11日 09時00分 公開

日本のOBD体制

 日本のOBD2であるJ-OBD2は、基本的な規格内容はOBD2と変わりませんが、日本向けに細かく指定された内容を含めた形で定められています。

 具体的に言及されている例として2009年7月30日に告示された物を見つけましたので、内容をある程度要約してご紹介します。細かい文言まで全てご覧になりたい方は、以下のリンクをご参照ください。

⇒国土交通省のWebサイトで公開されている詳細な告示の内容(PDFファイル)

「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」(2009.07.30別添48より)

 車両は以下のような有害ガス等の発散防止装置の機能に支障が生じた場合において、その旨を運転者に警報(警告灯点灯/点滅)するとともに、故障情報を保存する装置(J-OBD2)によって故障診断が行われなければならない。

  • 触媒劣化
  • エンジン失火
  • 酸素センサーまたは空燃費センサー(触媒前後にある場合は両方)
  • 排気ガス再循環システムの不良
  • 燃料供給システムの不良(オーバーリッチ、オーバーリーン)
  • 排気二次空気システムの不良
  • 可変バルブタイミング機構の不良
  • エバポシステムの不良
  • その他車載の電子制御装置と結びついている排気関連部品の不良

 これらの故障診断は、項目ごとに診断方法が具体的に指定されており、さらに「故障の確定方法(故障と判断する基準)」と「故障検知の解除(一時的と判断し、無視してOK)」まで明確に定められています(※詳細は上記リンクをご覧ください)。

 続いてご紹介したいのは以下の文章です。

「J-OBD2への保存と故障コード」

 故障を確定した場合は速やかに警告灯を点灯させるとともに、確定させた瞬間の車両データ(フリーズフレームデータ)をJ-OBD2の記録装置内部(ECU内)に保存し、読み出せるものとすること。

 故障の状態を識別するためのコードはISO 15031-6(2005年12月制定)またはSAE J2012(2002年4月制定)によること(先述したDTCのことです)。


 このフリーズフレームデータというのは、ECUが故障と判断して確定させた瞬間の各センサー値を記録することで、不具合の発生状況を把握するとともに、事象再現を試みる際の重要な参考情報として取り扱います。

 ただしあくまでも参考情報であり、フリーズフレームデータのみで事象を再現できる確率は著者の経験上では非常に低いと認識しています。

 フリーズフレームデータに加え、ECUの能力次第では「故障確定前後のセンサー値を数秒間記録」している機能もあります。

 これはドライブレコーダーのように、イグニッション(IG)オン状態であれば、あらかじめ設定されているセンサー値を常時記録し、DTCが検知された時点で確定前10秒間のログを記録するといった機能です。

 ただしこれはECUの記録容量に依存するため、車両コストと居住空間の確保に影響します。

 飛行機に搭載されているブラックボックスのように音声記録が録音されていたり、センサー情報が細かく記録されていたりすればいいのですが、それを乗用車に適用しようとすると膨大なコストが必要になります。

 そのコストは全て購入者負担となりますので、現実的ではありません。

 極端な話、事故などでクルマが燃えてしまったときに

「何か記録のようなものが残っていたりするでしょ?」

といったことを期待されている方々(官公庁の方は特に)もいらっしゃいますが、飛行機ではありませんので期待できるようなデータは何も出てこないのが大半です。

 ただ、最近は記録媒体が非常に小さく低価格で入手できるようになっていますので、近い将来にはもっともっと拡充されていく、されていくべき領域だと著者は感じています。

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