組み込み機器における「ハードウェア開発」はどのように行われるか組み込み機器開発入門(5)(2/3 ページ)

» 2015年11月10日 07時00分 公開
[EIPC事務局MONOist]

組み込みハードウェアと組み込みソフトウェアの関係

 連載の第4回(組み込み機器開発入門(4):「組み込みソフトウェア」の重要性をPC向けとの対比で理解する)では、組み込みソフトウェアを「特定用途向けに特化したハードウェアを制御し、必要となる機能を実現するためのプログラム」と定義しました。組み込みハードウェアは、組み込みソフトウェアが無ければ何もできません。

 では、組み込みソフトウェアはどのようにして、組み込みハードウェアを制御するのでしょう?そもそも組み込みソフトウェアは、どこにあるのでしょう?

 ハードウェアは見ることができますが、組み込みソフトウェアは見ることができません。組み込み機器においてソフトウェアは、記憶装置(組み込みハードウェアの中の一部分)の中に記憶されています。組み込みハードウェアは、この記憶装置からプログラム(ソフトウェア)を取り出し、そこに書かれている命令通りに動くという関係になっています。

組み込みハードウェアの開発手順

 では、組み込みハードウェアの開発手順について説明しましょう。

 連載の第2回(組み込み機器開発入門(2):BDレコーダー開発を例にした「組み込みシステム開発」概要)で組み込みシステム開発の流れを説明しましたが、組み込みシステム開発でハードウェア開発を行う際には、事前に必ず機能抽出とシステム設計を行います。

機能抽出で必要な機能を抽出して製品スペックを決定し、システム設計では、抽出した機能を実現するために必要なソフトウェア、ハードウェアを洗い出します。

 BD/DVDレコーダーの場合、テレビ、HDD、スマートフォン、タブレット、USBメモリなどとの接続を想定して「テレビとの接続にはHDMI」「HDDとの接続はSATA」「スマートフォンやタブレットとの接続は無線LAN」のようにハードウェアを選定します。また、動画圧縮伸張機能が搭載されたCPUとOSのLinuxカーネルを動かすため、512MbyteのRAMも必要だと考えられます。

BD/HDDレコーダー BD/HDDレコーダー

 ハードウェアの機能が確定したので、次はハードウェア設計を行います。

 ここでは、HDMI、SATA、無線LANなど選定した規格に対して最適な部品構成を決めます。部品選定では、既存の部品を組み合わせる、FPGAに集約するなどの検討も必要です。また、開発する組み込みシステムの台数、大きさ、コストなどさまざまな要素を考慮して部品構成を選択する必要があります。

 部品構成が決定したら、基板設計を行います。

 ところで、「基板」を見たことはありますか? 私たちが普段使用しているほとんどの電子機器には「基板」が組み込まれています。もし不要になった電子機器をお持ちでしたら電源が切れていることを必ず確認してから、ケースを空けてみてください。緑色(製品によっては黒や赤など)の板の上に大量の小さな部品が付いている板が、「基板」です。

新型Apple TVの分解完了後 新型Apple TVの分解完了後 出典:iFixit

 基板設計では、部品同士の接続を記載した電子回路図の作成が行われます。設計には専用のCADツールを使用するのが一般的になっています。

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