オムロンの“標高10mのIoT”は製造現場を明るく照らすか(後編)スマートファクトリー(3/5 ページ)

» 2015年10月13日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

海外生産現場でのIoT活用による見える化

 2014年度に取り組んだこの実装ライン見える化の実証活動の結果を受け、オムロンでは2015年度はIoT活用の枠組みを主に3つの方向性で拡大する。

 1つ目が、今回の草津工場での実装ライン見える化の「海外展開」だ。草津工場での実装ライン見える化のシステムを上海工場とオランダ工場でも活用する。実装ライン見える化システムをクラウド上に上げ、それぞれの工場の生産ラインのデータを常にクラウドに収集する形を取ることで、データ共有だけでなくシステム立ち上げについても素早い展開を可能とした。上海工場では既に活用を開始、オランダ工場では現在展開準備中だという。クラウドシステムはマイクロソフトのAzure IoT Suiteを活用しているという。

 足立氏は「草津工場と同じシステムを展開することで、上海やオランダなどの遠隔地でも同じように生産性改善の取り組みを行うことができる。また遠隔地でも生産異常などを発見しやすい。クラウド上でシステム展開を行っているため、今後さらに対象工場が増えたとしてもそのまま展開することが可能だ」と利点を述べている。

photo 実装ライン見える化の海外展開の概要(クリックで拡大)出典:オムロン

組み立てセルラインでのIoT活用

 また、新しい試みとして、上海工場では実装機の生産ラインではなく、組み立て生産ラインに適用していることが特徴だ。組み立て生産ラインは基本的に人手での組み立て作業となるため、本来は人の動きを取得するような高度なセンサーが必要になる。ただ、現在のシステムでは「ワークの通過時間」のみを取得するシステムとなっているので、一定の作業工程の中で通過時間のログデータさえ残せればよい。そこで同社上海工場では、組み立て生産工程内で使用する生産補助機器や治具をSysmac NJシリーズでつなぎ、ワークの通過情報を取れるようにしたという。

photo 上海工場の組み立てセルラインにおける見える化活用(クリックで拡大)出典:オムロン

 同社IAB 商品事業本部 草津工場 製造部 製造1課長の水野伸二氏は「組み立て生産ラインは人手で行うため自動的に時間を取得する方法がなく、従来はストップウォッチを使って測定する直接時間分析法が取られていた。しかし、組み立て工程でもさまざまな製造装置を活用しているのでそこに着目した。製造装置を使う場面のワークの通過時間を取るだけでもより詳細なデータを取ることができ、業務改善につなげられる。ここは従来は手つかずだった領域であるので、ある意味で実装装置よりも高い生産改善が得られる可能性がある」と述べている。

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