スリーエム ジャパンは宮城県仙台市の東北工業大学 地域連携センターと協力し、東北地域の中小製造業が抱える課題解決に向け、同社の“研磨技術”の紹介を通じて作業工程の改善を支援する取り組みを開始した。それに合わせて東北工業大学で開催されたセミナーで、その具体的な取り組みと狙いについて取材した。
“研磨材”で全国の中小製造業の経営改善に貢献する――。こうしたユニークな取り組みを進めているのが、スリーエム ジャパン(以下、スリーエム)の研磨材製品事業部だ。同社は2012年からモノづくりに欠かせない工程である研磨作業という視点から、中小製造業に対して現場の生産性の向上と、それに伴う経営改善に向けた提案を積極的に展開している。
2015年9月17日にはこの取り組みの一環として、宮城県仙台市の東北工業大学 地域連携センター(以下、地域連携センター)と協力し、東北地域の中小製造業が抱える課題解決に向け、スリーエムの研磨技術の紹介を通じて作業工程の改善を支援する取り組みを開始した。本稿ではこの発表に伴い、同日に東北工業大学で開催されたセミナーの様子をお届けする。
スリーエムとの協力を発表した地域連携センターは2014年に設立された。その目的は同大学の研究資源の活用を地域と連携した地域・産業振興や、地域に根ざした人材育成の推進だ。地域企業に対して、産学官の連携による人材育成や新商品開発、マッチング支援など、幅広いサポートを展開している。
東北工業大学が地域連携センターを設立し、こうした取り組みを進める背景には、人材不足に伴う労働力不足や、技術・事業の継承が困難になりつつあるといった地域の中小製造業企業が抱える大きな課題がある。その一方で、産学連携や技術開発、マーケティングによる市場開拓など、現状の打破につながるような活動に日々の経営に追われる中小製造業が意識的に取り組むことは難しい。そこで、地域連携センターではこうした中小製造業が手の届かない部分の支援を進めているという。
地域連携センターの事務長を務める猪野信氏は、宮城県内の中小企業の現状について「多くの企業で現場に人手が足りていない。さらに社内での育成制度が整っておらず、企業が持つ技術、さらには事業そのものも継承していくすべを持っていないことも多い。とても厳しい状況に置かれている。最近では定年退職の年齢を65歳まで引き上げる動きもあるが、宮城県内の一部の企業では人材不足と技術継承が進まないことで70歳でも現役で働いている方がいる状況だ」と述べる。
今回のスリーエムと地域連携センターが協力する目的は、“研磨作業の改善”によって、こうした人材不足などの課題を抱える金属や機械加工を手掛ける中小製造業の経営改善だ。とはいえ、研磨作業の効率改善が、中小企業の経営に一体どれほどの効果をもたらすのだろうか。
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