バネ上マウントのウィングの怖さ車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2015(1)(2/4 ページ)

» 2015年09月24日 10時00分 公開

本日のメインイベント!

 学生フォーミュラの“動的審査の華”、エンデュランス競技は一周約1kmのジムカーナ的レイアウトのコースを2人のドライバーで10周ずつ、約22kmを走行するというものです。1台がスタートし、半周走ったところで2台目がスタートする形式で、タイム差が大きい時には安全に追い越しが出来るエリアが設けられており、抜かれる側にはオフィシャルによるフラッグが振られます。

 競技最終日の午後は、エンデュランス以外の動的審査での総得点数上位6チームが走るという、観客側としても、まさに「本日のメインイベント」というわけです。

第1レース:大阪大学 VS 京都工芸繊維大学

 この2チームは常に上位に名を連ねる強豪校です。ゼッケン番号は2014年の総合順を示しています。

 No.16の大阪大学(OFRAC=大阪大学フォーミュラレーシングクラブ)は筆者の過去3回の取材でも毎回驚かされる、いわゆる「ロジカルチーム」です。今年のマシン「浪速15」はフロント、リア共にウィングがありません。

 おや? と思い、手元のiPhoneで前日までの情報を集めてみると、大きなウィングが付いています。エンデュランスはエアロデバイスによるダウンフォースよりも重量やモーメント低下を狙って外したのでしょうか? この辺りの事情はインタビューする機会が得られず残念ながら分からずじまいでした。

大阪大学「浪速15」スタート直後の勇姿

 続いてスタートしたのはNo.5の京都工芸繊維大学の「GDF-10」、2012年の第10回大会では、大阪大学とわずか16点差(1000点満点)で初優勝したことは筆者の頭の中に鮮烈に残っています。くしくもその2校の対決となりました(とは言ってもタイムレースなので一対一の勝負ではありませんが)。

 エアロデバイスを持たない伝統的にシンプルなカウルですが、フロントカウルの高さが低くなり、アッパーマウントされたサスペンションユニットが露出しているのが目につきます。エンジンはスズキLT-Rの450cc単気筒エンジンで、第1コーナーから第2コーナーに向かうこのコースで最も長い直線(と言っても100m位でしょうか?)の途中で小気味よくシフトアップしていきます。

 対する「浪速15」はカウルのライムグリーンのアクセントからも分かるようにカワサキ(川崎重工業)製のZX-6R用の600cc4気筒エンジンを使い、発進時以外はシフト固定(恐らく2速)です。「GDF-10」が40PS、「浪速15」が91PSと2倍以上の最大出力の差がありますが、小さなコーナーやスラロームが続くこのコースは、ピックアップの良い単気筒エンジンが向いているといわれています。実際にも「GDF-10」は一周当り5秒ほど早いラップタイムを刻み、第1ドライバー、第2ドライバーで各一回、「浪速15」はコースを譲ることになりました。

京都工芸繊維大学「GFD-10」スタート直後の勇姿

 この写真をご覧ください。第1ドライバーのとあるラップ、第1コーナーの両車の姿ですが、前輪の向きにわずかですが差があります。

 実際、間近で車両の挙動を見ているとさらに顕著な差が分かるのですが、「GDF-10」はきれいにコーナー曲率に合った舵角を保っていますが、「浪速15」はより内側を向いています。いわゆるアンダーステアが出ている状態で、ドライバーはかなり苦労したことと推測できます。両車のタイム差の一番の要因はこのコーナリング性能によるコーナリングスピードだと思います。

 ニュートラルなハンドリングで気持ち良さそうに、時にはリアタイヤをスライドさせ、きれいにカウンターステアを当てて第1コーナーを抜けていく「GDF-10」に対し、ステアリングホイールを力でねじ伏せるように曲がっていく「浪速15」、20周のタイム差は120秒にも広がりました。

 エンデュランスの順位は「GDF-10」が3位、「浪速15」が12位、総合順位は京都工芸繊維大学が2位、大阪大学が5位という好成績を収めています。

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