パナソニックは、2015年8月21日に発売する筋力トレーニング機器「ひざトレーナー」についての技術セミナーを開催した。ひざトレーナーは、久留米大学とJAXAの共同研究で得られた知見を基にした新しい運動法を取り入れた製品である。
パナソニックは2015年8月19日、東京都内で、同年8月21日に発売する筋力トレーニング機器「ひざトレーナー」についての記者向け技術セミナーを行った。ひざトレーナーはパナソニックと久留米大学が共同開発した製品で、人間の動作と電気刺激を組み合わせた「ハイブリッドトレーニング」という運動法を採用した機器だ。価格は14万8000円(税別)、パナソニックが認定した店舗でのみ販売するという。
セミナーには、研究開発に携わった久留米大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、パナソニックの担当者が登壇し、技術解説や開発経緯の説明を行った。
ひざトレーナーに採用されたハイブリッドトレーニングは、久留米大学医学部整形外科科学講座 主任教授 志波直人氏を中心とする研究グループが2000年から研究してきたトレーニング方法だ。高齢者の脚力低下に役立てるために研究は進められていたが、「長期宇宙滞在における筋力低下への対処方法としても活用できる」ことから、JAXAとも共同研究を進めてきた。
研究に携わったJAXA 宇宙飛行士運用技術ユニット 技術領域主幹 大島博氏は「宇宙に1日いるだけで、寝たきりの人の2日分、高齢者の半年分に相当する筋委縮が起こる。そのため、宇宙飛行士は常に効率的なトレーニングを行うことが求められる。その一方で、物資の運搬量の制限から、運動器具は小型でなければならない」と、宇宙医学の現状を説明する。
宇宙には重力がないため、ダンベルトレーニングのように、小型で一定の重量を持つ器具で負荷を掛ける運動を行うのが難しい。一方、無重力下でも一定以上の負荷を掛けられるような運動器具となるとどうしてもサイズが大型になってしまう。そこで目を付けたのが、志波氏のハイブリッドトレーニングだ。ハイブリッドトレーニングは、伸展している筋肉に電気刺激を用い、あえて収縮するようにして、無重力状態でも骨と筋肉に負荷を掛けられるようにする。国際宇宙ステーションでは既に実験が行われており、ハイブリッドトレーニングが宇宙で行う運動として効果的であるという結果も得られたという。
「運動中に電気刺激を与えるトレーニング手法は世界でもほとんど前例がない」と話す志波氏。また、高齢者の腰が次第に折れ曲がるように、筋力が衰え重力にあらがえなくなくなる現象(ロコモティブシンドローム)をどうにかしたいという臨床医学の課題と、重力がない状態での運動法を考えねばならない宇宙医学の課題は共通点が多く、JAXAとの共同研究はハイブリッドトレーニングの進展に不可欠だったと述べた。
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