「Arduino分裂」渦中の1人が胸中を語るArduino

人気のボードコンピュータ「Arduino」が分裂している。「Arduino LLC」と「Arduino Srl」に分かれて訴訟繰り広げており、事態は沈静化の兆しを見せていない。Arduino SrlのCEO、Federico Musto氏が来日、胸中を語った。

» 2015年08月03日 19時18分 公開
[渡邊宏MONOist]

 人気のボードコンピュータ「Arduino」が分裂している。米国の「Arduino LLC」とイタリアの「Arduino Srl」に分かれて訴訟を繰り広げており、いまだ事態は沈静化の兆しを見せていない。

 渦中にあるArduino SrlのCEO、Federico Musto氏がMaker Fair Tokyo 2015に合わせて来日、胸中を語った。

「Arduino」の歴史

 分裂について説明する前に、Arduinoの歴史を振り返ってみよう。Arduinoの原型となったプロジェクトを立ち上げたのは、イタリアのMassimo Banzi氏らを中心としたグループで、2004年に彼らは「Smart Projecets Srl」を設立してArduinoのハードウェア開発と製造を開始している(Srlはイタリア語で有限会社)。

photo 事態を説明するArduino SrlのCEO、Federico Musto氏

 その後、2008年にソフトウェア開発を行う「Arduino LLC」(LLCはLimited Liability Company:有限会社)が米国で設立され、Arduinoについてはハードウェア開発と製造が「Smart Projecets Srl」、ソフトウェア開発が「Arduino LLC」という2社体制によって事業が推進されることとなった。

photo 「Arduino」の歴史

訴訟合戦

 そして2014年、商標権を巡ってArduino LLCがイタリアでSmart Projecets Srlを提訴、Smart Projecets Srlは米国でArduino LLCの出願した商標を取り下げるよう申請するなど、互いの商標権無効を訴える事態となり、2015年7月末時点では解決に至っていない。

 なお、2014年11月にはFederico Musto氏がSmart Projects Srlを買収(買収は2015年1月に完了)、CEOに就任し社名をArduino SRLに変更しており、現在は「Arduino LLC」対「Arduino Srl」の訴訟合戦となっている。

 来日したMusto氏はArduino LLCについて、「Arduino Srlは単なるライセンシーではなく、プロジェクトの主体である」「Arduino LLC株式の20%を所有しているのに、帳簿を見せてもらえない」などと主張し、不満を表明する。

photophoto Federico Musto氏の主張する(写真=左)、Federico Musto氏の挙げるArduino LLC側の主張(写真=右)

2社の行方

 2社の今後については「訴訟次第」と前置きしながらも、「最適な結論が何かを模索している」と株式の半分を譲渡するなど提案もしていることを明らかにした(ただ、この提案は拒否されたそうだ)。しかし、一方で「Arduinoはオープンソースであり、競争によって新しいものが生まれることも決して悪いことではない」とも話すなど、胸中が揺れ動いていることも伺わせた。

 Federico Musto氏はLinuxベンダーのRed Hatで欧州中東地域でのGMを務め、Arduino Yunの開発からArduinoに関係、Arduino LLCの前身に当たるSmart Projecetを買収して、2015年1月にCEOに就任した人物だ。

 Linux業界での経験が長いためか、Arduinoについて、互換性チェックの他ソフトウェアとハードウェア(シールド)の開発、Makerコミュニティーのための教育を3つの柱とする「Arduino Foundation」の設立を計画しているという(話しぶりからはLinux Foundationをイメージしているようだ)。

 なおArduinoの販売を手掛けているスイッチサイエンスによれば日本国内の「Arduino」商標についてはArduino Srlによって登録されており、Arduino LLCからArduinoという商標の表示された製品を販売すると商標権違反となってしまうという。また、IDEについてもArduino LLCの製品については1.6.x、Arduino Srlの製品については1.7.x系と、2系統に分かれてしまっている。ただ、利用者の立場からすれば、いずれも“Arduino”であり、Musto氏の言う通り早急な「和解と合流」が望まれる状況となっている。

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