さてこのような状況になると何が起こるかということですが、真っ先に感じられるのは「悪臭」でしょう。エアコンをつけると動物のような臭いがする、カビ臭がすごい……。まさにカーエアコンの宿命といった所でしょうか。
小さなお子様などがお乗りになる場合であれば、健康面も十分に注意したい所ですね。
そもそも悪臭の原因はカビ類や細菌類ですので、臭いがするということは排出されている冷風や温風にそれらが含まれているということです。
悪臭の原因である異物の除去は、内装の奥に設置されているエバポレーターやヒーターコアを直接洗浄する以外に手はありません。そしてかなりの工数(出費)が必要になります。
簡易的な洗浄などを行ってくれることもあるようですが、場所が場所だけに完全に清掃することは不可能に近いと言っていいしょう。細かなことを言えば、異物が付着しているのは主にエバポレーターやヒーターコアなのですが、風の通り道全てが異物の付着対象になります。原因の全てを除去するには通り道となる部品を全て新品に交換するしか手がありません。ただそれは現実的ではありませんね……。
そこで、最近のカーエアコンシステムは、ブロアファンの前にエアコンフィルターを設置する構造になっており、異物がシステム内を循環/堆積しないような構造になっています。
エアコンフィルターの素材にも工夫が施してあり、脱臭炭を織り込んでいたり、抗アレルゲン仕様になっていたりとさまざまです。
ただしフィルターには集じんおよび脱臭能力に限界があり、その期間というのは使用環境によって大きく変動します。特別な使用環境ではないと本人が思っていても、フィルターの脱臭能力が無くなった時点で交換時期です。
実際に交換するとなると意外と高額なのですが、それだけ特殊な素材・性能を兼ね備えていなければ、家庭用よりも圧倒的に不利な環境下で使用されるカーエアコン用フィルターという製品は成立しないということです。
「新車状態から半年で交換時期だと言われて納得できないので、理屈を教えてほしい……」というご相談を個人的に何度も受けたことがあります。新車時に充満している「新車独特の匂い」も高性能フィルターから見ると脱臭対象です。そして「脱臭=無臭が理想」ですので、新車独特の匂いとその他の臭とを人間のように「不快ではない」「不快」といった感覚で嗅ぎ分ける・選んで収集することは今のところできません。
フィルター付き仕様の車で匂いが気になるようになったら基本的には交換時期です。脱臭能力や集じん能力を失った状態で使用を続けると、本来は到達してほしくないエバポレーターなどへ臭いの元が堆積する原因となります。潔く交換することを強くお勧めします。
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