今回の取り組みでNECの強みとなるのが「NECの持つ先端IoT技術の活用」と「NEC自身の実証活動」「パートナー連携による提供価値拡大」「顧客企業との共創活動≫」の4点だ。この内、顧客企業との共創活動は従来続けてきたものづくり共創プログラムによる取り組みを指す。
IoTおよびビッグデータ活用では、主にデータを「収集」し、それを「分析」「自動制御」および「価値創造」につなげていくことが1つの流れとなる。NECでは、これらのそれぞれにおいて、独自の技術を抱えていることが特徴だ(関連記事:工場の最適稼働や巧みの技の再現も可能に――NECがビッグデータで勝つ理由)。
例えば、データの収集技術としては、高い画像認識技術がある。部品や製品の表面の凹凸で個体差を区別する「物体指紋認証技術」や計器表示板の文字をカメラで読み取る「計器文字読み取りシステム」、現実の環境にデジタル情報を付加する「AR活用作業支援システム」、作業員の動きをカメラで読み取る「動線把握システム」など数多くの画像認識技術を保有する(図5)。
分析技術としては、独自技術として「インバリアント分析技術」や「異種混合学習技術」「RAPID機械学習技術」「テキスト含意認識技術」などを保有している。これらを活用することで、製品や設備の異常を検知し、原因を特定する他、変化する需要予測への対応など、従来見えなかった状況を「見える化」できるようになる(関連記事:NEC、ビッグデータ分析で補修用在庫部品量を最適化する技術――2015年度から外販)(図6)。
制御技術としては、産業用PCをはじめとしたPCベースソリューションにおいてメーカーや通信規格間の差異を吸収したシームレスな連携を可能にする。また、変更の容易化とセキュリティ面での利点からSDN(Software Defined Networking)の提供に取り組んでいく(図7)。製品に向けた価値創造としては、IoTプラットフォームとして保有する「CONNEXIVE」の提供を進めるという(図8)。
これらの技術的な強みを、「製造業としてのNEC」自身で導入し、これらのノウハウを実践することも今回のIoTソリューションを提供していく上でポイントとなる。
同社では1990年代から生産革新活動に取り組み、先進的な事例も数多く保有しているが、IoTについても同様に先進工場を決めて実践を進めていく方針だ(関連記事:NECは、どうやって「在庫が山積みなのに売り場は欠品」状態から脱却したのか)(図9、図10)。
これらのソリューションを導入する実践工場は、NECプラットフォームズ掛川工場(静岡県掛川市)、甲府工場(甲府市)、NECネットワークプロダクツの福島工場(福島市)としており、最終的に「トータルの生産性を30%向上させる」(NEC ものづくり統括本部長 久保田紀行氏)。
2015年7月1日にはNEC Industrial IoTを推進する専門の推進組織も新設予定。同組織は、従来のものづくり共創プログラム、M2M事業担当、エンタープライズ関連組織の人員を配置し、開始当初は30人体制で運営するという。
これらの取り組みにより、2015〜2018年度の累計4年間で2000億円の売上高を目指すという。「2014年度の売上高が約200億円だったので単年度の売上高としては、2倍以上に成長させることになる」と松下氏は述べている(図11)。
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