日本の製造業が共通して抱える課題と生きる道再生請負人が見る製造業(8)(3/4 ページ)

» 2015年06月09日 10時00分 公開

「8Mイノベーション」とは

 日系製造業においては最近、「現場力の弱体化」が問題視されつつある。コスト競争力を増すために、日本企業の多くが製造拠点を海外に移してきたが、その弊害が出ているという指摘である。

 特に、海外の生産拠点において日本と同水準の生産品質に到達するには、多くの課題が山積しており、きちんと利益に結び付けられるかどうかは難しい。本来は、日本国内の工場と、新興国あるいは先進国の工場とが、共通の経営理念と手法で運営され、販売数量や為替といった外的な変動要因に対して、企業グループ全体として柔軟に対応できる体制が理想である。しかし、多くの日本の製造業における実態は、国内と海外の工場で、生産品質におけるギャップを埋め切れずにいる。その背景には、国内外の工場を共通の経営手法で運営する枠組みがないことが大きい。

 その解決のためにアリックスパートナーズでは「8Mイノベーション」という手法を利用している。「8Mイノベーション」とは、経営管理の8要素である「従業員(Man)」「設備(Machine)」「調達(Material)」「管理技術(Method)」「顧客満足(Market)」「利益管理(Money)」「経営管理(Management)」「開発管理(Modelling)」を「ものづくり組織能力(MOC)」(図1)として定義し、各製造拠点の「現場力」を判断するものである。

photo 図1:ものづくり組織能力(MOC)の例(クリックで拡大)出典:「工場“最強化”のためのノウハウ大全」(佐々木久臣著、日経BP社、2013)

 この「ものづくり組織能力(MOC)」のスコアは、総資産営業利益率(ROA)と極めて高い相関関係を持つことが実証されており、収益力強化のための具体的な対策を特定するのに大いに役立つ(図2)。

photo 図2:ものづくり組織能力(MOC)と総資産利益率(ROA)の相関(クリックで拡大)※出典:「工場“最強化”のためのノウハウ大全」(佐々木久臣著、日経BP社、2013)

 この手法は経営改革において特定分野の優先順位付けを示唆するだけでなく、収益力強化のための打ち手の特定と、その進捗管理に活用できる。例えば、以下のような活用例がある。

  • 自社の事業部門、国内・海外子会社の収益性改善のための打ち手の検出と進捗管理
  • 出資・融資先企業の収益性改善のための打ち手の検出と進捗管理
  • 新規プロジェクト(M&Aや新規事業など)の計画策定および進捗管理
    1. M&A候補のデューディリジェンス、買収統合計画の策定(目標設定と達成度管理)
    2. 新規事業発足後の経営管理(経営力と収益性の目標設定と達成度管理)
  • サプライヤーの実力評価

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