トヨタ自動車の認識通り、これまで中国では、新エネ車として電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及に重きが置かれてきた感がある。フォルクスワーゲンに代表されるドイツ勢やGMは、中国専用の電気自動車を開発したり、内燃機関車のプラグインハイブリッドモデルを投入したりなどの対応策を講じてきた。
現状でも、広州のようにハイブリッド車を新エネ車に指定する都市もあるが、北京や上海といった一級都市では、現状、電気自動車やプラグインハイブリッド車といったモーター駆動の車両を重視する政策が敷かれている。しかし、トヨタ自動車のプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」は、モーターだけで走行できるEV走行距離が、中国のプラグインハイブリッド車の指定基準である50km以上を達成できていない。同社としては、2020年からの施行が想定される新燃費規制に向かって、まずはハイブリッド車の存在感を強調していきたいところだろう。実際、大西氏は、このように付け加えている。
「中国国内で、これだけ電気自動車の推進がなされていることによって、電池技術における革命が起こることも否定できません。中国には、それだけの力が備わりつつあると感じています。そうした期待を含めて、中国独自のブランドである『領志(リンジー)』で小型電気自動車を投入する予定です。これと併せて、2020年までの新車種投入を含めて、ハイブリッド車の展開を充実させて、大きなキャンペーンを展開することも考えています。ぜひ、期待していてください」(大西氏)
中国政府は、2020年までに500万台の新エネ車の普及を目指す目標を立てている。新エネ車を電気自動車やプラグインハイブリッド車に限っている現状では、充電インフラの設置台数の少なさがネックになって普及の速度は鈍い。ハイブリッド車の強みを生かしたいトヨタ自動車の思惑とあいまって、ハイブリッド車が新エネ車として広く認められれば、トヨタ自動車の中国市場における巻き返しが始まるのかもしれない。
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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