MONOist 最近の日本市場では、売れ行きにつながるクルマの評価のされ方として、効率のよい移動手段という側面だけでなく、デザインも大きな役割を担うようになってきました。マツダの新世代商品車はその代表例だと思います。実際に手応えを感じていますか。
前田氏 最近は特に手応えを感じています。グローバルな視点で比較すると、日本の自動車市場はデザイン感度が低い、遅れていると言われる状態になり下がっていました。かつてはそうではなかったと思うのですが……。
デザインはクルマのコアバリューの1つ。だってかっこ悪いクルマは欲しくないですよね? デザインが価値になると言われることがナンセンスなんです。
でも、日本市場がデザインの価値を再認識したという記事が見掛けられるように、これまでどんなデザインでも許容してきたというのが実際だったわけです。そうなると世界から取り残されてしまうと思い、ずっと危機感は持っていました。
最近は徐々に状況が変わっていて、われわれデザイナーがきちんといいものを見せれば、ユーザーも「いいものってこういうものなんだな」と分かってくれる。そう思ってもらえるようにすることは、われわれカーデザイナーの責任です。かつてそれができていなかったのは、私を含めてカーデザイナーの怠慢だったと思います。
MONOist 話は変わりますが、ND型ロードスターのデザインについて聞かせてください。2014年9月にデザインが初披露された際には、ロードスターでありつつ、魂動デザインでもあるという融合した印象を受けたのですが。
前田氏 実は私からすると、ND型ロードスターは魂動デザインのセンターだと感じています。
「魂動デザインって何だ?」と考えるときに、フロントフェイスのシグネチャーウイングをはじめ2次元的なグラフィックで解釈する方が多いですよね。でも魂動デザインは、最初に話した通り「形に命を吹き込む」というのがテーマ。だから、ND型ロードスターの生き生きとしたデザインは、魂動デザインのセンター中のセンターになるんです。
それくらいの幅を持っているのが魂動デザインです。
魂動デザインの広がりを示すため海外の講演で、「CX-3とND型ロードスターをブックエンドとして、この間に魂動デザインの広がりがある」という話をしたこともあります。シャープでモダンなCX-3と、柔らかいロードスターが両端にくる。ただし、この範囲と決めているわけではなくて、もっと広げるかもしれません。
ND型ロードスターがマツダ以外の会社のクルマに見えるかというとそうではないし、デミオもマツダのクルマにしか見えない。そういった雰囲気というかオーラ、においといったものを規定しているのが魂動デザインです。どういったラインを入れるとかは1つの手段にすぎません。
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