3Dモデリングツールや3Dプリンタを活用し、モノづくり業界で活躍するエンジニアやクリエーターにスポットを当てる本企画。今回は、神奈川県・鎌倉市でフリーランスとして活躍するハードウェアエンジニア/3Dモデラーの仙頭邦章氏を紹介する。
3Dモデリングツールや3Dプリンタを活用し、モノづくり業界で活躍するエンジニアやクリエーターにスポットを当てる本企画。初回となる今回は、神奈川県・鎌倉市にある面白法人カヤック(本社)のシェアオフィスを拠点に、2013年12月からフリーランスとして活動するハードウェアエンジニア/3Dモデラーの仙頭邦章氏を紹介する。
仙頭氏は2014年8月、1カ月間無料で3Dモデリングを行う「Make1010」という取り組みに挑戦し話題となった人物。Make1010の“1010”は、名前の“仙頭(セントー)”から取ったもので、「1010個のモデルを作る勢いで、とにかく依頼を受けるぞ!」という意気込みが込められていたそうだ。現在、Make1010の取り組みは終了しているが、「Gutto(仮)」というサイトで3Dモデリングの依頼を受け付けている。
フリーランスとして活動し始めてもすぐに仕事が入るわけではないため、自分を売り込む必要がある。しかし、単に自分はこんなスキルを持っている! と文字や言葉でアピールするだけでは説得力がない……。そこで仙頭氏は、まず自分に何ができるのか実際に知ってもらうことが重要と考え、無料3Dモデリングの企画としてMake1010を思い付いたのだという。
ハードウェアエンジニア/3Dモデラーという立場で、フリーとして活躍するとはどういうことなのだろうか。フリーになって丸1年が経過した仙頭氏に、会社という組織にとらわれずに働くことの魅力や鎌倉での活動などについて聞いた。
なお、仙頭氏は3Dモデラボで開催したモデリングコンテスト「3Dモデラボ コンテスト 〜2014秋〜」において、「Stratasys/MakerBot賞」を受賞している。受賞作品のコンセプトや副賞の3Dプリンタの使い道なども併せて伺った。
――まず、ご自身について教えてほしい。
仙頭氏 もともと算数や数学が好きな子どもだった。本格的に設計の道を目指したきっかけは、映画『遠い空の向こうに』の影響が大きい。航空宇宙分野への興味を強く持ち、日本大学 理工学部 航空宇宙工学科へ進学。在学中は飛行機の設計・製作などに取り組んだ。
大学卒業後、航空機の設計を手掛けるデザイン会社に入社。およそ7年間、航空機のエンジンやギアボックスの設計開発などを行ってきた。しかし、あるとき体調を崩してしまい、それがきっかけでフリーランスの道を選択することにした。
サラリーマン時代の仕事は非常に多忙だったが、それが嫌だったわけではなく、むしろ好きだった。だから体調を崩した後、いったんは職場復帰を考えた。しかし、復帰に向け準備を進めている間に、会社のリズムで働くことよりも自分のリズムで仕事をしてみたいという思いが次第に強くなり、最終的に辞める決意をした。
そんなこともあり、フリーランスとなった現在は「自分のリズムで、楽しいことをしながら、お金を稼ぐ」という目標を掲げている。
世間一般からすると、甘い考えに思われるかもしれない。しかし、かつての私と同じように、体調を崩して休んでいる方、精神的な不安を抱えている方に向けて、「無理をしないでも働ける、こんな方法もあるんだよ」というアドバイスを、身をもって発信できたらと考えている。そのためにもこの目標を実現したい。
――「自分のリズムで、楽しいことをしながら、お金を稼ぐ」という目標だが、フリーランスになって約1年が経過し、どの程度実現できたか?
仙頭氏 楽しさや充実感はあるが、まだまだ稼げていないのが現状。そんなに甘くないのは分かっている。ただ、フリーランスという道に進み、環境を大きく変えた中でもまずなんとか1年間やってこれたというのは大きな自信になった。
仮に、急に稼ぐことができたとしても目標である「自分のリズム」で「楽しく」が保てなくなってしまう。ゆっくりとマイペースに活動の幅を広げていきたい。
フリーランスの魅力の1つは、やりたい・やってみたい仕事を自分で選んで挑戦できる点にある。自分で選択したからこそ、高いモチベーションで仕事に打ち込むことができる。フリーランスになってから、日曜の夕方に「明日から仕事かぁ〜」と嘆くことも一切なくなった。全て自己管理でやりくりしなくてはならないが、その分、高い意識で責任を持って仕事ができる。こういった充実感はサラリーマン時代には得られなかった。日々大変ではあるが、今、毎日本当に楽しい。
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