TDKは、車載システムのECU(電子制御ユニット)の電源回路などに用いる6mm角サイズのパワーインダクタ「CLF6045NI-D」を開発した。使用温度範囲の下限を従来の−40℃から−55℃まで拡張するとともに機械的強度を向上した。
TDKは2014年12月16日、車載システムのECU(電子制御ユニット)の電源回路などに用いる6mm角サイズのパワーインダクタ「CLF6045NI-D」を開発したと発表した。使用温度範囲の下限を従来の−40℃から−55℃まで拡張するとともに機械的強度を向上したことを特徴としている。エンジンルームやエアバッグ、ABS、ヘッドランプなど耐久性を求められる用途をはじめECUの電源回路であれば全てカバーできるという。サンプル価格は50円。2015年2月から、月産170万個の規模で量産を始める計画だ。
CLF6045NI-Dは大まかに分けて4つの改良点がある。1つ目は、使用温度範囲が−55〜150℃となり、下限が従来の−40℃から−55℃まで広がったことだ。欧州の自動車メーカーを中心に、北欧やロシアなどの寒冷地での利用に対応できるようにするため、低温側に使用温度範囲を広げてほしいという要求がある。また、航空機を用いて輸送を行うこともあるため、高空における低温環境にも耐えうる部品を使いたいという要望もあった。これらに対応するため、CLF6045NI-Dは、熱膨張率の小さい接着剤を材料メーカーと共同開発し、温度変化によって部品に掛かる負荷を低減した。
2つ目の改良点は機械的強度の向上である。これについては、パワーインダクタのコアになるフェライトの強度を向上して対応した。従来品のフェライトコアに掛かる力をシミュレーションで解析し、力を分散させられるような構造に変更した。
3つ目ははんだレス構造の採用だ。従来、パワーインダクタのコイルである銅線と銅製の電極は、はんだを使って接合していた。しかし長期間利用していると、振動や温度変化による負荷がはんだに掛かってクラックが入り不具合の原因になることがあった。CLF6045NI-Dでは、はんだを使わずに銅線と銅電極を溶接工法で接合しており、クラックが入りにくい構造になっている。
4つ目は製造プロセスの改良である。同社の車載パワーインダクタの製造プロセスでは、工程間の搬送や装置への構成部品のセットといった手作業が必要だった。CLF6045NI-Dは、それらの手作業を自動化した一貫ラインで製造している。最初にカセットを使って装置に構成部品をセットすれば、完成したパワーインダクタのテーピングまで自動で行ってくれる。「車載パワーインダクタで自動一貫ラインを導入するのは当社で初めてのこと。これで、製品の信頼性と品質をさらに高められる」(TDK)という。
CLF6045NI-Dの仕様は以下の通り。インダクタンス(100kHzの場合)は1.0〜470μHで。直流抵抗は0.011〜1.300Ω。定格電流は、インダクタンス変化率に基づく場合で6.7〜0.28A、温度上昇に基づく場合で4.8〜0.41Aとなっている。
今後は同じ技術に基づく車載パワーインダクタのラインアップを拡充する計画。最初に発売する6mm角の他、5mm角、7mm角、10mm角、12.5mm角の品種を追加する。
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