インダストリー4.0と同様、モノづくりを革新する動きが各国でも進んでいることを先述したが、その背景には、製造業を取り巻く社内外の複雑性の高まりがある。「グローバル化の一方で、ニーズのローカル化やパーソナル化は進んでおり、製品周りだけを見ても一気に複雑性が増している。これらの外部環境の複雑さに加えて、企業内の体制も一気に複雑になっている」とザイデルマン氏は指摘する。
これらの複雑性を解決するためには「一極集中型の管理システムでは不可能だ。分散化されたインテリジェンス化(知能化)を実現しなければならない。各機器のインテリジェンス化を実現した上で、企業の外部と内部の複雑性のバランスを取ることが重要になる」とザイデルマン氏は話している。
これらの複雑性に対応する仕組みがサイバーフィジカルシステムとなる。IoT(モノのインターネット)技術を活用することで、各種機器がスマートフォンのようになり、さらにインターネットサービスを組み合わせることで、現実の世界で起こることをコンピュータの世界に取り込めるようになる。これをコンピューティングパワーを生かして解析し得られた結果を現実世界にフィードバックする。このサイクルをリアルタイムで回転させることで、複雑な現実の世界の状況を読み解き、最適な結果を実際の世界に反映させ、求める結果を得ることができるというものだ。
ザイデルマン氏は「現実と仮想の世界の距離が縮まる。最新のICTの能力を現実世界で最大限発揮できるようにした仕組みだ」と述べている。
サイバーフィジカルシステムを実現するため、機器のIoT化を進めるといっても、全ての機器で一気に進めることは難しい。ザイデルマン氏は「いくつかのタイプがあり、RFIDなどシンプルなものも存在している。それぞれに必要なカタチで進めていくことになるだろう」と語る。
またITアーキテクチャについては、オープン化・標準化が進み、水平統合と垂直統合が進む見込みだ。またその核となるのがクラウド技術となる。従来は個別のシステムとして存在していた各種システムをクラウド環境上で仮想化して連携させることでシステムのリアルタイム性や自由度を高めることができるというものだ。
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