パッケージングでは、後席の快適性と荷室容積で大きなメリットもたらしている。後席の快適性では、前席と後席の距離、足回りの空間などで、競合他社の5ナンバーセダンをはるかに上回る広さを確保している。グレイスの開発責任者で、本田技術研究所 四輪R&Dセンター 主任研究員の広瀬敏和氏は、「当社の中型セダンであるアコード ハイブリッドに匹敵する後席空間の広さを確保している」と説明する。
この他、センターコンソール背面に、エアコンの吹き出し口やスマートフォンの充電に使えるアクセサリーソケットを設置するなど、後部座席の快適性に配慮した装備が用意されている。
荷室容積は430lあり、9インチゴルフバッグを3個積載できる。この荷室容積だけでみれば、競合であるカローラ アクシオのハイブリッドモデルの461lとほぼ同等である。ただし、i-DCDのリチウムイオン電池パックやインバータ、DC-DCコンバータなどから構成されるIPU(インテリジェントパワーユニット)を荷室床下に設置できているので、後部座席を前に倒して荷室と空間をつなげるトランクスルーが可能になっている。
ハイブリッド車の場合、電池パックを後席座席の裏側に設置する傾向がある。このためにトランクスルーできないことが多い。カローラ アクシオのハイブリッドモデルは電池パックを後席下部に収めているので構造的にはトランクスルーが可能だが、機能として設定されていない。
グレイスは、カローラ アクシオのハイブリッドモデルとは違って4WD車が設定されている。四輪駆動システムはビスカスカップリング式を採用した。ビスカスカップリング式四輪駆動システムは、エンジンからの動力を伝達するカップリング内プレートが金属接触して過剰なトルクが発生する「ハンプ状態」が起こるという課題があるが、グレイスではハンプ状態を起こさないハンプレス構造になっているという。
また雪上坂道発進など前輪が極めて滑りやすい状況では、横滑り防止装置との協調制御でスロットル開度を低減し、前輪の空転を抑制する。前後輪の回転差を適切に制御して、ビスカスカップリング式の特徴である優れた初期応答性を維持しつつ、後輪への最適なトルク配分を実現したという。
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