富士通研究所は光に情報を埋め込み、その光に照らされたモノをスマートフォンのカメラで撮影するだけで情報を復元する照明技術を開発した。タグを取り付けるなどの手間を掛けず、スマホをかざすだけで情報を取得できる。
富士通研究所は2014年11月17日、モノへ照射する光に情報を埋め込み、その光に照らされたモノをスマートフォンのカメラで撮影するだけで情報を復元する照明技術を開発したと発表した。同年11月19〜20日に独ミュンヘンにて富士通が開催する展示会「Fujitsu Forum 2014」に本技術を出展し、2015年度中の実用化を目指す。
本技術はR/G/Bの光の各色成分の強弱を時間方向で制御することでID情報とし、受信側では撮影した映像の色変化の波を検出してID情報を取得する。ID情報の取得についてはスマートフォンのカメラと専用アプリを利用する。カメラは特別なカメラである必要はなく、既存カメラで対応できる。
モノに反射した光をカメラで取得する際、モノの表面反射率に応じて光の一部が吸収されたり、反射してしまうために反射光は投射光と同一ではない。そのため、カメラで撮影した映像(物体映像と反射光)については、反射を考慮した補正を行うことで情報の検出精度を高めている。
これは2012年6月4日に富士通研究所が発表した、映像に微小な明かりを重畳し、その数を増減させることにより光通信のような明暗を緩やかに発生させて情報を送信する「映像媒介通信技術」がベースとなっている。
新技術では情報の伝達に色の各色成分の強弱を利用するため、LED照明のような調光可能な照明器具を用いる必要がある。また、対象物の色が黒など、反射を抑える暗色の場合には「やや苦手」(同社)というが、映像媒介通信技術開発時からの知見蓄積により実用化には問題ないとしている。
モノに情報を付加する技術としては、QRコードやiBeacon(NFC)、可視光通信、Bluetoothなどが既に実用化されているが、新技術では光に情報を埋め込んで照射するために対象物の美観を損ねず、また、照明を当たっている範囲内でしか情報が伝わらないためにモノ単位での情報配信が可能であるなどの特徴を持つことから、店舗や美術館、観光地など幅広い場所での活用が期待できるとしている。
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