世界の3Dプリンタ市場、2017年に32万台へと拡大――国内市場も2万2000台へ市場調査/予測

矢野経済研究所は、3Dプリンタ世界市場に関する調査を実施し、その結果の概略を発表した。世界の3Dプリンタ市場は2013年の7万台から、2017年には32万台へと拡大するという見通しを示した。

» 2014年11月17日 12時50分 公開
[MONOist]
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 調査会社の矢野経済研究所は2014年11月17日、同社が行った3Dプリンタ世界市場に関する調査結果の概略を発表した。それによると、世界の3Dプリンタ市場は2013年の7万台から、2017年には32万台へと拡大するという。

 同調査は、3Dプリンタメーカー、販売代理店、造形サービス事業者、ソフトウェア関連企業などを対象に、専門研究員による直接面談、電話やメールによるヒアリング、ならびに文献調査を併用して行ったものだという。調査期間は2014年7〜10月。ここで定義する「3Dプリンタ」とは、3次元データをもとに樹脂や金属などの積層によって、立体物を造形する装置としており、主な製品タイプとしては造形方式や使用する素材の違いにより、熱溶解積層方式、光造形方式、粉末焼結方式、インクジェット方式などを対象としている。

 以下に調査内容について見ていく。

2Dプリンタメーカーが3Dに新規参入へ

 2013年の世界の3Dプリンタ出荷台数は7万台(事業者出荷数量ベース)となった。このうち国内3Dプリンタ出荷台数は3600台(同ベース)。国内においては2013年に報道の過熱もあり、興味先行での導入が進んでいたが、2014 年に入り、工業・研究分野でのコスト削減、納期短縮などといった3Dプリンタの特長を評価した本格的な導入が増加している。

 国内市場をけん引しているのは小型で安価なコンシューマ向け(価格が50万円未満の)装置で、モノづくり企業における入門機としての他、社員教育用ツールとしての導入が増加している。これらにより、2014年の国内3Dプリンタ出荷台数(同ベース)は、前年比172.2%の6200台に拡大すると同調査は予測する。

 今後は、既存の2Dプリンタメーカーが3Dプリンタ市場に新規参入する動きが活発化。同調査では、2Dプリンタメーカーは、2Dプリンタと3Dプリンタには共通する技術があることや2Dプリンタ事業で培ったブランド力を強みに、3Dプリンタ市場でシェアを拡大していくと予測。また、これらの企業が市場参入することで、装置や材料の低価格化が進むことが期待されており、市場拡大につながるとしている。

拡大する最終製品の3D造形サービス市場

 日本国内においても、3Dプリンタによる最終製品の造形ニーズが高まっている。最終製品の造形に利用されることで、3Dプリンタや材料はますます高性能化し、ハイエンド(装置価格が1000 万円以上の)装置の需要が高まる。そのため、中小企業にとって3Dプリンタは手の届きにくいものになり、3Dプリンタによる造形サービス事業者への需要は、今後、中小企業などを中心に増加していくと同調査は、予測している。

さらなる市場の拡大

 世界ではクラウドファンディングなどによる新規市場参入が増加しており、コンシューマ向け装置は価格競争が進む見通し。また欧米では3Dプリンタに対する国の金銭的支援や3Dプリンタ利用に向けた教育が旺盛なこと、3Dプリンタによる最終製品の造形が進んでいることなどから、これまで以上に高性能な装置・素材が市場に投入されるという。

 これらを背景に2013〜2017年までのCAGR(年平均成長率)は46.2%で推移し、2017年の世界の3Dプリンタ出荷台数は32万台(事業者出荷数量ベース)になると予測する。一方、国内市場では、今後の市場拡大への貢献が期待されるのは、教育分野や医療・福祉分野、航空宇宙分野だとしている。教育機関は予算が厳しいところも多く、コンシューマ向けの3Dプリンタ装置の導入が多くを占めるが、2014年に入り、国による補助金制度が発表されたことが導入の追い風になる。

 また、医療・福祉分野は、市場の拡大が最も期待されている分野である。医療分野の造形物は患者個々に合うようカスタマイズが求められることなどから少量多品種の生産に向く3Dプリンタと相性が良く、ハイエンドの装置を中心に需要が増加するとみられる。その他航空宇宙分野では、複数パーツを溶接する必要がないなどの点が高く評価されている。これらを背景に2013年から2017年までのCAGRは57.2%で推移し、2017年の国内の3Dプリンタ出荷台数は2万2000台(事業者出荷数量ベース)に成長すると予測している。

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