アンシス・ジャパンの自動車分野とエレクトロニクス分野向けのユーザーカンファレンスで、デンソーの技術開発センターでデジタル・エンジニアリング室長を務める赤池茂氏が基調講演を行った。赤池氏によれば、デンソーにおけるCAE活用の方針は、「広めよう・高めよう・組み込もう」という3つの言葉が基礎になっているという。
アンシス・ジャパンは2014年10月9〜10日、東京都内で、自動車分野とエレクトロニクス分野向けのユーザーカンファレンス「Automotive Simulation World Congress 2014/ANSYS Electronics Simulation EXPO 2014」を開催した。基調講演には、デンソーの技術開発センターでデジタル・エンジニアリング室長を務める赤池茂氏が登壇。「デンソーにおけるCAEの活用と促進―現状と未来―」と題した講演を行った。
赤池氏は講演の冒頭で、「CAEは、1970年ごろからプレゼンのためのツールとして使われ始めた。その後、エンジンアリングツールとしての活用されるようになり、現在では一部の試作を代用するまでになっている。デンソーでは、1990年代から社内でのCAE活用を進めてきたが、その方針は『広めよう(Expand)・高めよう(Enhance)・組み込もう(Embed)』という3つの言葉が基礎になっている」と語る。
「広めよう」を進める上で重要になったのが「CAEエンジニア」の定義だ。「CAEをどこまで活用できるエンジニアをCAEエンジニアと呼ぶべきか。われわれは、CAEを活用して1つの製品を開発する能力を持つエンジニアから、1つの物理現象についての解析を行う際にツールのカスタマイズまで行えるエンジニアまでを『CAEエキスパート』と呼び、このCAEエキスパートを1000人まで増やすことを目標した」(赤池氏)という。
当時、デンソーの技術者は全社で約7000人在籍しており、1つの開発グループは7人程度で構成することが多かった。つまり、1つの開発グループにCAEエキスパートが1人いるようにすることが目標になっていたわけだ。ちなみに1996年時点では、1日当たり1個のCAEジョブを流すエンジニアの数は50人に過ぎなかったという。
この他にも、パワートレインや熱関連、エレクトロニクス関連といった事業部ごとにCAEサテライトを配置した。CAEサテライトの事業部内での活動はCAEエキスパートが担当し、全社IT部門内のCAEグループがCAEサテライトを支援する体制を取った。
これらの体制による最終目標は「CAEが製品開発に用いる一般的なツールになること」(赤池氏)である。
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