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» 2014年10月29日 11時00分 公開

マツダが「SKYACTIV-D」を開発できた理由は「内燃機関が好きだから」今井優杏のエコカー☆進化論(14)(2/4 ページ)

[今井優杏,MONOist]

ユーロ6とポスト新長期規制

 そう、今年(2014年)9月から施行されたのがユーロ6です。

 施行されればそれ以降は基準に適合しないエンジンは販売できません。だから、各社この9月に照準を合わせ、規制をクリアするディーゼルエンジンの開発に技術の粋を集結させてきました。

 そしてこのユーロ6に施行前から適合していたディーゼルエンジンだけが日本で販売されてきたのです。それがここ数年のディーゼル快進撃のタネ明かしになります。

 なぜなら、2009年に適用が開始された日本の排出ガス規制「ポスト新長期規制」は、NOxとPMの規制値がそれぞれ0.08g/kmと0.005g/kmで、ユーロ6と同じ。ですので、ユーロ6に適合しないことには、世界で最も厳しいといわれる排出ガス規制を持つ日本では販売できなかった。ディーゼル開国は牛の歩みで進んできたのですけど、施行を前にユーロ6へ適合を済ませたエンジンが加速度を増して国内市場に導入されてきたのですね。

 自動車関連のメディアやジャーナリストも、その人気の後押しにはずいぶん腐心してきたと思います。なぜなら、環境はもとより、運転していてとても楽しいんですよ、ディーゼルエンジンは。

 ガソリンエンジンと燃焼の特性が違うので、アクセルの踏み始めから最初にグワッとトルクが持ち上がる感じがワクワクする楽しさで、信号待ちなど時速0kmからのスタートはもちろんのこと、山道などワインディングロードなど、カーブを曲がったところからの再加速時にもいちいち胸のすくような加速Gを楽しむことができます。それに高速巡航時の熱効率の良さ=燃費の良さも優秀。

 ディーゼル鎖国をしていただけに、その間欧州で鍛えられまくった完成度の高いディーゼルエンジンのデキの素晴らしさに、みんなとても感激したのです。

 これは前時代のネガティブイメージを払拭(ふっしょく)し、皆に乗ってもらわねば! そういう記者としての使命感もひそかに生まれたくらい。当時私も、ディーゼル最高! オーイエー! 的な原稿をたくさん書きました。

 しかし、その鎖国のせいで国内メーカーのディーゼルエンジン開発力はいまひとつ。そのうち日本のお家芸ともいえるハイブリッドシステムが台頭してきたのもあり、や、ラインアップにガソリンエンジン数種とハイブリッドがあれば問題ないっしょ! みたいに、ディーゼルエンジンをまったく視野に入れないモデル展開をしているメーカーは国内にも多いです。いや分かります。エンジン1個増やすって、しかもそれがディーゼルエンジンって、本当に大変なことなの。

 そもそも、何でガソリンエンジンの排気ガスがあんまり問題にならなくて、ディーゼルだけが問題になるのか。ガソリンエンジンの排ガスは、エンジンから出たあとに三元触媒という装置を通して、規制値をいとも簡単にクリアするレベルにまで浄化できるのです。

 でもディーゼルエンジンから出た排気ガスには、構造上三元触媒が使えない上、コスト、サイズ、安全性などあらゆる面でこの三元触媒に勝る、もしくは迫ることのできる浄化装置がなかった。

 こと後処理の話だけでこれですから、エンジンの製造コスト自体もガソリンより高価ときたらなおのこと。現状ガソリンエンジンで完全にモデルを網羅できているメーカーが、イチから汗水たらして新たにディーゼルエンジンを開発するメリットは、残念ながらあんまりないんです。

 そんな中で、鎖国中でありながら高圧燃料噴射システムであるコモンレールを採用したクルマを欧州で発表するなど、海外で評価の高いディーゼルエンジンを開発してきたメーカーの1つであるマツダは、他のメーカーが外すことなんてできないと考えていた、尿素を使った触媒(尿素SGR)やNOxを一時的に吸蔵してのちに還元するNOx吸蔵還元触媒などの後処理装置を一切使わず、燃焼のみでポスト新長期規制に適合するディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」を作り出したのです。

「SKYACTIV-D」を初搭載した「CX-5」(左)と排気量2.2lの「SKYACTIV-D」である「SKYACTIV-D 2.2」(クリックで拡大) 出典:マツダ

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