管理上必要となってくる稼働時間の中身についてももう少し見ていくことにしましょう。
例としてマニュアル旋盤で金属板に穴を開ける作業をイメージしてください。このとき実際にハンドルを握り、切り粉を出しながらドリルが穴を開けている作業時間を「正味作業時間」と呼びます。また、この作業を行うための金属板の取り付け、取り外し、ならびにドリルの交換に関わる作業時間を「正味段取時間」と呼びます。
これら正味作業時間と正味段取時間がいついかなる条件下でも同一作業時間であれば話は単純なのですが、実際にはそうなりません。加工する金属板の枚数や他の作業との兼ね合いで時間が変化する場合もあります。そうして増えた作業時間を「割増作業時間(Allowance)」と呼びます。
これら作業時間の合計に作業を遂行する上で必然的に発生する余裕時間を数%あるいは数分間見込んで加算した時間を「標準時間」と呼びます。さらに生産高に見合う標準時間のことを「標準出来高時間」と呼びます。ここで生産高に見合うと書きましたが非常に単純な例でいえば、製品1個当たり10分の標準時間で設定されているものを100個生産すると1000分の標準出来高時間になるということです。
一方、稼働時間と標準出来高時間の差が「能率差異」ということになります。この能率差異には、加工はしたものの不良などで製品化されなかったものに要した時間や、設備が急に停止したことによる作業中断時間、設備の劣化や不調などで加工時間が想定よりも長くかかってしまう、などの状況が想定されます。そのため、この能率差異は、製造管理上ゼロになることが望ましい部分になります。
実はこの能率差異の中身をきちんと把握することが改善活動の第一歩となります。そのためにも、作業時間の実態を把握した上で、標準時間を確実に設定し、日々の非負荷時間を把握した上で、能率差異を定量的に管理できる仕組みを構築していくことが重要です。能率差異が小さくなれば、生産計画が立案しやすくなります。そのため、総就業時間に対する稼働時間の比率である「稼働率」も計画値からの乖離度を小さくすることができます。ひいては、原価差異の発生も抑えることができるというように幸福のサイクルが回っていくことになります。(次回に続く)
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